騙し騙しの畏敬感
□第三廻
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しばらくラキストさんとの修行の結果を見てもらって、巫力を大分使ったので休憩させてもらった。
「最初は巫門遁甲で躓いてどうなるかと思ったけど…これなら本当に大丈夫そうだね」
「………」
何も言えなくなる。この感覚は何度か覚えがあった。
「落ち込んでいるのかい?もうできるんだからいいよ、そんなに謝らなくても」
相変わらず。相変わらず、だ。
「…………」
「お前は自分を卑下する癖があるが、それは時に成長を妨げる」
相変わらず、何もわからない。
お話をするときはいつもハオ様に自分の通訳をさせてしまっている。本当に変わらない。
「…ハオ様。ハオ様は独りですか?」
少し前にふと疑問に思ったことを聞いてみる。
遠慮とか、気遣いなんてものは今の私は知らない。
「…独り?」
ハオ様が驚いたような顔で私を見る。
「だってみんなの心が読めるって、裏側も全部見えちゃうってことですよね」
表では都合のいいことを言うけれど、本心ではどう思っているかわからない。それが人間だ。
たとえその人が善意で本心を隠しているのだとしても、読めてしまう。
人の繋りは建前と、ほんの少しの都合のいい本音で成り立っている。
その建前が全部本音とすり変わってしまうのならば、誰とも関係なんて結べない。
ならば独りと同じことだ。
「紀にしては珍しくはっきりとした考えだな」
「……」
「謝る必要なんてないよ。確かにお前の考える通りだ。」
ハオ様にそう言われ、私の中のもやもやとしたものが消える。
たとえ私の考えが間違っているのだとしても、私にとってはそれが確かな真実だ。
他の人のことなんて関係ない。ハオ様は別だけれど。
_あんまりあいつを信用するな_
いつかしーくんが言ったこと。
「紀」
でも、私にはハオ様しか信じることのできる人なんていない。
きっと私もハオ様を独りにしているひとりなのだろうけど、せめて傍にいたい。
それが唯一私の心に響く声だから。