12/11の日記

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目が覚めると、黒服を着て立っていた。此の身に起きた説明出来ない現象に戸惑っていると、同じ様に辺りを見渡す同じ人間が数人同じ部屋の中に居た。

「此処は」

武装探偵社の名探偵にそっくりな男が声を出す。

「僕は、僕は何故。僕は首領の娘として過ごしていた筈だ。こんな場所の従業員になった覚えは無い」

唸る様な怒りを剥き出しにした女性の声に、俺達の意識は我に返る。

「てか、お前ら居たのかよ」

知り合いの性悪が声を出す。其れに対して、「アンタこそ」とこれまた友人が返す。誰も情報を持っていないらしい。ならば、俺が恐らく一番情報を得ているのだろう。

「此処は、書き込めば願いが叶うと云う白紙小説によって生み出された敵の根城だ」

四人の大人達が俺を振り返る。友人達は各々反応している。

「敵は《天人五衰》。確認で聞くけど、お前此処で働いているみたいな記憶ある?」

性悪に聞いてみれば、性悪は首を振って腹立つ笑みを浮かべていた。

「そんなモンあるとでも?だったら焦って無いだろ」
「ハイハイ。で、其方側は今云った記憶がある」

俺は然う云った。大人達は心当たりがあるように其々(それぞれ)胸を押さえた。

「俺達の記憶に無いのは当然だ。本の改変は俺達には通じないんだから。でも、此の人達は違う。偽の記憶を入れられた」
「じゃあ、早いとこ脱出したいわね」

オネエが然う云うと、他の大人達も頷いた。

「私の記憶によると、此処は天空カジノ。先の大戦における戦勝国によって作られたそうです」
「そんなモン有ったら白鯨落とし出来ねえわ……」

流石にフィッツジェラルドに世界を敵に回す余裕はない。俺が然う呟くと、怪訝な顔になった大人と、はあと叫んだ喧しい友人が一人。

「何や其の物騒な単語!?」
「あーハイハイ。取り敢えず自己紹介しとくわ」

俺は然う云って、名前と組合所属である事を伝えた。其れに続いて友人達が名乗った。性悪もきっちりと。
大人達の方も名乗ってくれた。全員が≪天人五衰≫の敵である事を確認し、名探偵そっくりの男がこう云った。

「私達は今此の時から仲間です。仲間として情報共有し、早めに脱出しましょう」

其れに誰もが頷いた。同じ境遇になったと云う連帯感があったのだろう。
黒服が似合う、男装が上手い女性がこう言った。

「此処の支配人は、シグマと云う名前らしいが」
「シグマ……」

偽名だと分かる其の名前に、俺は本名を名乗るのは危険だと云った。だったら、シグマに合わせて全員が記号の名前を名乗る事になった。
直ぐに支配人と名乗る男が現れた。何処か主人公の彼と似た姿の男が。

「子供達も含め、全員が正式な従業員として今日から働いて貰うことになるが、大丈夫だろうか?様子を見に来たが」

如何やら、俺達は集団と云う設定になっていたらしい。
打ち合わせの内容が減った。助かった。

「はい、問題ありません。私はデルタと申します」

名探偵に似た男が俺達の前に立って、真っ先に名乗った。其れに倣って全員が名乗ったが、男装の上手い女性が名乗った時だけ困った様に笑った。

「すまない。アルファと云う名前の従業員は一人いるんだ。ベータでは駄目だろうか?」
「承知いたしました、問題ありません」

アルファとは、誰だろうか。

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