空ハ青ク澄ンデ

□第二十三話
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薄暗い部屋の中で考える。ゴーゴリは焦っていた、恐らく「実行」までもう時間は無い。

此の部屋に扉は無い。窓も無い。だが壁が薄いし、異能力を使用すれば破る事なんて容易い。
然し、ゴーゴリはドストエフスキーと繋がっている。ドストエフスキーが「此の世界で殆(ほとん)ど有る訳が無い」俺の情報をゴーゴリに伝えていないとは思えない。

罠か?出たら如何なる?此の先に何が有る?
屋敷は広い。どの部屋かなんて来たばかりの俺に判る筈も無い。

更に、ゴーゴリはこう伝言してきている。「事が動くまで出るな」と。
大人しく指示に従えば探偵社に災いが起こる。何がしたいのか判らないが、ゴーゴリの目的なら、あの男の考えなら判る気がした。

「同じだ、同じだよ。見事にな……!!」

理解すれば理解するほど、苛立ちが募って机を叩く。ゴーゴリは「俺」と同じだ。
あの男は殺人がどれだけ罪深いか、人を傷付ける事がどれだけ恐ろしい事なのか善く知っている。

知っているからこそ、探偵社に問うたのだ。

「建前ばかりで、遣っている事は自分と同じではないのか?」と。
そして其れを証明する気なのだと俺は思っている。
俺とあの男の違いは、人を傷付ける事が出来るか否かだ。俺には絶対に出来なかった。だがゴーゴリには出来た。出来た、と云うより恐らく「するしかなかった」のだろう。

却説(さて)。
俺の遣るべき事は、一体何だ?

目を閉じて深呼吸する。社長に遣ってしまった時の様に慌ててはならない。後手に回りたくない。
今の俺に足りない物は何だ?――――情報だ。情報が足りない。足りなさすぎる。
情報源の確保が先か。

『独歩吟客』を使用して携帯を取り出す。つい先程、ゴーゴリに壊されたばかりの物だ。
先ずはフィッツジェラルドの元へと連絡する。

「夜宵!」

耳が痛くなる程の第一声だった。

「煩いよ、フィッツジェラルド。悪かったって」
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