空ハ青ク澄ンデ
□第四話
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連れられた組合の、豪華客船の中で俺はフィッツジェラルドに服を見立てられていた。
「嗚呼、然し君は真面(まとも)な服が無い!此処に有る物では足りない!」
「オイ」
「直ぐに購いに行かなければ!」
「オイって云ってんだろ!」
俺は青筋を立ててフィッツジェラルドを睨み付けた。
そんな俺の服装は、北欧宗教(ゴシック)趣味の礼服(ドレス)だった。
俺の服をフィッツジェラルドが新調しまくってるのは別に善い。だが、これは。
「何で全部女物なんだよ!!巫山戯んな!!」
「え?」
フィッツジェラルドが目を丸くして俺を見た。上から下まで見降ろした後、此奴は更に腹立つ発言をした。
「君、女子(レディー)だろう?」
「男だよ!!!俺って云ってんだろうが!!」
元から女顔だったのは認めるし、其れを利用して来た事もあるから女顔と云われても今更怒りはしない。
だが、「女」そのものに間違えられるのは屈辱だ!!
俺が怒りに震えていると、呑気にも此奴は次に俺に着せる女物の服を身繕っていた。……趣味が何処ぞの首領に似ているのは気の所為(せい)か?
「だが、此の……「キモノ」だったかな。之は素晴らしいと思わないか?」
「〜〜〜〜〜ッ好い加減にしろぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!」
俺に見せた目録(カタログ)に載っていた「着物」は案の定、キラキラとした女物で。
遂にブチ切れて怒鳴ると、フィッツジェラルドの目が変わった。空気も変わる。
俺を睨み付けたフィッツジェラルドは恐ろしく、息の仕方も忘れてしまいそうだった。声が出ない。
「君は俺の「物」だ。俺が俺の「物」を如何しようと勝手な筈だが」
「……ッ」
「――――嗚呼、すまない。其の姿で俺を怯えた様に見るのを止めて呉れ。まるで娘に怯えられている様だ」
フッと空気が和らいで、俺は其の時久し振りに息をする事が出来た様な気分だった。
殺気、と云うのだろうか。そんな物を向けられた事なんか殆(ほとん)ど無い俺は、其の場に膝から崩れ落ちた。