空ハ青ク澄ンデ

□第三話
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嫌な予感で、胸が苦しい。
―――見付かった。見付かってしまった。
冷たい汗が流れるのを感じながら顔を上げると、其処には短めの黄金の髪が風に揺れていた。

日本人ではないと分かる程に白い肌。
薔薇の様に少し色付いた頬。
俺を見下ろす銀色(シルバー)とも薄い青色(ブルー)とも言える瞳。

組合団長 フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルドが俺の目の前に居た。

恐ろしさに震えそうになったが、其れより今は俺の命を少しでも長らえさせるのが優先だ。震えている場合ではない。
然う思った俺は、フィッツジェラルドを睨み付けて鞄の中の本に触れながら口を開いた。

「心が狭いんだな、組合団長。貧乏人が物珍しさに見ていただけだろ、金持ちの余裕位見せやがれ」

挑発する様な言葉がスラスラと口から出た。だが、其の言葉に気分を悪くした様子はなく。
……と云うか、上の空で何かを考えている様だった。

俺も流石に首を傾げていると、フィッツジェラルドが急に俺の腕を掴んだ。俺の顔を確認する様に覗き込んで、また何かを考えている。

「何だよ!?離せ!離せって!!」

意味不明な此の行動に若干の恐怖を覚えながら、俺はフィッツジェラルドに怒鳴った。
何か、不味い事でもしたか?取り敢えず此の男から距離を取らなくては。

ジタバタと少し暴れていると、フィッツジェラルドが不意に手を離した。本当に意味不明だ。
そして、次に奴と目があった時……。

フィッツジェラルドは先刻迄とは違った笑みを浮かべていた。其れは、「嘲笑」ではなく「懐柔」の笑み。

「君を購(か)いたい、貧乏人。幾らだ?」
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