空ハ青ク澄ンデ

□第六話
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暫くして、様子を見に看護師が来た。目が覚めた俺を見て、「如何して直ぐ知らせなかったんですか!」と怒りながら医者を呼びに行った。
呼ぶ訳ないだろ、ホーソーンと話してたのに。

「夜宵!」

慌てた様子でフィッツジェラルドが部屋に入って来た。何て顔してんだよ、アンタは。
俺は苦笑しながら出迎えた。

「無事か、怪我は!?」
「アンタ、過保護か。異能力の使い過ぎだよ。怪我する前にちゃんと逃げた。だから、ホーソーンとミッチェルは組合を抜けただろ」

フィッツジェラルドが困惑した目で、驚きに満ちて見開いた目で俺を見ていた。
部下の離脱と死亡に、俺の異能力発覚。そして、何より「俺が此の事態を知っていた」事。
全て予測外の出来事で、此の男の動揺を誘うには十分な出来事だったんだろう。

「云わなかった俺も俺だけどな。アンタがホーソーンとミッチェルを価値観は違えど、どんなに大事に思ってるのか」
「……異能力、と云ったか」

フィッツジェラルドが唸る様な声で俺に訊いた。そして掴み掛りそうな勢いで。
俺は其れを冷静に見ながら云った。

「云った。だから、俺は条件を出した。俺の異能力を知ったら、誰であれ俺を利用しようとする筈だ」
「何故、然う言い切れる?」
「云う前に約束しろ」

俺はフィッツジェラルドの胸倉を掴んだ。驚いて目を丸くしたフィッツジェラルドに念を押す様に、低い声で云う。

「条件を絶対に守ると」

フィッツジェラルドは一瞬呆けていたが、掴んでいた俺の手を容易に外して寝台に寝かせた。

「約束する」

然う答えるフィッツジェラルドの顔が、真剣そのものだった。今、フィッツジェラルドからすれば俺の能力を利用したい筈だ。
話してはみるが、若し約束を破った場合……契約を破棄して逃げるか……。ホーソーンが俺の本を返してくれたし。
疑心暗鬼になりながらも、俺は口を開いた。

「異能力『創造』。其れが俺の異能力だ。俺が一度もアンタに鞄を触らせなかった理由も、俺が異能力者だと知られたくなかったからだ」
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