空ハ青ク澄ンデ

□第六話
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「私が何をするか、分かっていますね」

ホーソーンの問いに頷いた。そんなの分かっている。だって、あの男はアンタに指摘されるまで気付かなかったのだから。
アンタがそう動く事は、分かっていた。

「アンタはミッチェルを連れて組合を抜ける。そして、彼女を助ける為に別の誰かを探す。フィッツジェラルドは、金で彼女の名誉を取り戻す事を持ちかけた。結果的に、其れは彼女へ更なる「屈辱」を、「敗北」を与える事になった。

彼女の「敗者の烙印」は金で消せやしない。過去は変えられない。一生消えやしない。

此の侭なら、彼女は「金に釣られて作戦に参加したが失敗して切り捨てられた哀れな女」になる。其れが、アンタには許せないんだろ?

――――知ってるよ。ミッチェルは、責任感が強くて優しい人だ。こんな所も、戦争も似合わない人なんだよ」

俺はホーソーンに笑って見せた。其れが、ミッチェルに出来る最後の事だ。

「連れて行きなよ、ホーソーン。ミッチェルを、此処に置いてはいけない。
地下の鼠なら、嘘を吐く事もあるけど約束はしてくれる。魔人なら、ミッチェルを治してくれる」

ホーソーンが顔を歪めた。ゆっくりと体を起こして、ホーソーンの手を握った。

「さようなら、ホーソーン。魔人に宜しく」

俺が然う云うと、ホーソーンはゆっくりと笑顔になった。まるで、俺を慈しむ様に。

「貴方も、御元気で。彼に利用されない事を祈っています」

然う云って、ホーソーンが部屋を出て行った。出て行く時のホーソーンは絶対に振り返らなかった。

「……しないよ、フィッツジェラルドは。俺なんかの事で取り乱す様な人だから」
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