空ハ青ク澄ンデ
□第五話
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一つだけ、俺に残された道があった。
其れに気付いた時、手が動いていた。鞄の中から本を取り出して二人に向かって叫んでいた。
「ホーソーン!ミッチェル!俺は先に行く!!」
今の俺にとっての「最適解」。其れは、此の場を脱出しフィッツジェラルドの元迄行き着く事。
其れが可能な異能力は、一つしか無い。
其の前に、せめてもと一つだけお節介をした。
「夜宵様、我々も」
「其れじゃ遅い!手遅れだ!!」
俺は叫んで、ホーソーンとミッチェルの腕を掴んだ。其の儘走り出し、船を降りた。
「離れろ!今すぐ、船から離れるんだ!!」
俺の叫んだ言葉に、部下達が顔を見合わせた。ホーソーンもミッチェルも行き成り動き出した俺に呆然としていた。
「真逆、読まれるなんてねえ」
聞こえる声に、俺だけが驚かなかった。船に居る、傷一つ無い梶井基次郎を見上げて睨み付けた。
「煩い、梶井基次郎。ポートマフィアの伝言役。今迄動かなかったけど、もう其れ所じゃねえ」
ホーソーンとミッチェルを繋ぐ手についつい力が籠る。
梶井は笑いながら宇宙語みてえな俺には善く分からん演説を自分に酔い痴れながら云った。
「僕と宇宙大元帥から君達へ贈呈品(プレゼント)だ」
奴が然う云った瞬間、上空の荷物が爆発し大量の檸檬型爆弾が降ってきた。
ホーソーンとミッチェルだけでも。最初から其の心算だった。
だから、俺は本に向かって叫んだ。
「『檸檬爆弾(レモネード)!』」
爆弾だけなら、此れでも防げる。実際、爆発の後も俺達三人だけが無傷で済んだ。
「へえ、やるねえ!」
楽しそうに云う彼に、「此処迄か」と俺は溜息を吐いた。
ホーソーンが爆破させた時点で、俺が出来る事は無くなった。二人に干渉するのも此処までだ。
「梶井基次郎、聞けよ」
俺は船に向かって叫んだ。船縁から、梶井が俺を見下ろしていた。