空ハ青ク澄ンデ

□第二話
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然うしている間にも、時間は進む。無情にも。

泉鏡花が、探偵社に入った事を聞いた。彼の福沢諭吉の孫娘なんて直ぐに噂になるに決まってる。
寒気がした。今日こそは、武装探偵社に入社しなくては「奴等」がもう直ぐ来る。

武装探偵社の近くまで来た時、上空から煩い音がした。……現代で聞き慣れた「ヘリ」の音が。

「嘘だろ……」

俺は空を見上げて目を見開き、呟いた。序(ついで)に舌打ちもした。俺は如何やら時間をかけ過ぎたらしい。
奴等――――組合(ギルド)が横浜へ着いてしまった。是から此の横浜は異能力者の戦場になる。俺が今まで通り過ごせる確率もぐんと減った。

ヘリが道路近くまで下りてきて扉が開いた。咄嗟に俺はビルの間に隠れた。見付かれば、組合は勿論……こんなド派手な登場しているのだから、ポートマフィアにも見付かってしまう。必死に見付からない事を願っていた。本を出す事は出来ない。異能力を使えば全てがバレてしまう。武装探偵社で残っている「事務員として雇ってもらえる」可能性が消える。そんな事はしたくなかった。

奴等が武装探偵社に入っていく。そして、暫くして出て来た。聞かなくても分かる、交渉決裂。赤毛の少女「モンゴメリ」が持っていた麦藁帽子を捨てた事で、「宮沢賢治」が彼女の異能力の中へ消えた事も確認した。

俺が彼を助け出す事は、出来る。俺の異能力ならば、彼の居る場所まで行く事が可能だ。
然しそうするなら、俺は事務員になる事を諦めなければならない。

自覚している。俺が、どれだけ身に合わない強大な力を持っているのか。そして、其れを人助けの名の元に「誰かを傷付けてしまう」事が恐ろしい。
ただ平和に暮らしたいんだ、俺は。

「宮沢賢治」を助けるかどうか迷っていると、頭上から声が聞こえた。

「何を見ている、貧乏人」と。
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