短編集

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貴女という人間は いつも身勝手で





ヒトの苦労や迷惑を省みない、





言うなれば僕の大っ嫌いな人種、だったのに








ストーカー的思考>論理*綺麗な青春








何も言われぬまま、ひたすら腕を引っ張られ足早に歩くこと数分。



長い階段を登って、屋上に通じる扉の前の踊り場まで来た。



残念ながらこの高校の屋上は解放されておらず、トキメキもへったくれもない陰ったこの踊り場が最高地点とも言えた。





「あ、アレン先輩?急なことすぎて頭がキャパシティオーバーなんですけど……」

「ええまあそうでしょうね。」

「えっと……あの……お久しぶりです…………?」





夢か?これは夢なのか?



そうでもなければ、未だに先輩と手を繋がれたまま(というか肘の辺りをむんずと掴まれたまま)、真正面で話すなんて有り得ない。





(きっとそうだ。これは私の欲求不満が見せた白昼夢に違いない……!!)










「夢だと思っているとこすみませんが」


「へぁっっ!!?」


「("へぁっ"……?)これは紛れもなく現実です。逃避すんな」





まさかの、テレパシー……。



目を真ん丸にして見つめるレイに、漸く会話の機会を得たアレンは口角を上げた。





「あれ、おかしいですね。いつものキミなら
"先輩と心が通じあった〜♪"
くらい言いそうなものですが」

「や、あの、」





「それとも、他にストーカー対象を見つけたんですか?」





「へ………………」





未だに状況が飲み込めず、返す言葉がないレイ。


対して、むくれたようにそっぽを向くアレン。










「…………先輩」





やや間が経って、レイが口を開く。


彼女は俯き、その表情は読み取れない。





「……なに」










「一度、病院に、診てもらってください……」


「はぁあ?」





とんでもないことをほざく後輩に、アレンも面食らって思わず手を離した。


その途端、力が蘇ったかのようにレイは、がっしと先程と逆にアレンの手を掴んだ。





「な…………」



「私が、先輩以外に、ストーカーァ!?

舐めないでくださいッッッ!!!」





彼女の顔は般若のように怒り狂い、何も反論できぬほどの圧がある。


というか、自分が優勢だったのにいつの間にやら形勢逆転したこの現状にこそアレンは納得がいかない。


え、僕が怒られてる?なんで?





「貴方をこの世でいっちばん愛しているのは紛れもなく私ですよっ!?」


「えっ、あ、」


「"心が通じあった〜♪"だぁ!?
私なら貴方が思うことすべて実現して差し上げますよ!!
どんだけ金がかかろうと無謀なことだろうと!!
先輩が誰と付き合ったとしても貴方の幸せの為に尽くすし、
万が一にも死ねと言われたら、永久保存版の先輩記録ビデオ抱えてエベレストからでも飛び降りたるわ!!!」


「…………」


「確かにこのテスト期間中、先輩の観察と尾行を怠ったのも事実ですよ。

しかし!いつなんどきも、私の頭の中にあるのは 貴方だけなんです!!」










ゼェゼェと肩で息をしつつ、アレンの手をずっと固く握り続ける。


言いたいことはすべて言い切った。


引かれるだろう、なんて考えもせず、思っていることすべて。





(もうどうにでもなれ!!)





そう決心し、アレンの顔を見上げる。










「あははっ。上出来です」


「……えっ」





予想に反し、先輩は笑っていた。


心底楽しそうに。……嬉しそうに。





「ブレないですね、あんた」


「(は、初のあんた呼び!うぉー!!)」


「こんなに絆される筈じゃ無かったのになぁ……」





正直、不安だった。



目に見えなくなって、彼女が周りに居なくなって、その愛を感じることが出来なくて。



まるで、世の中がつまらないものに思えていた。










「僕のこと、世界一愛してるんでしょ?
なら、幸せにしてくださいよ」


「そ、れは……どういう」





「僕のいちばん近くにいて。」





オマケのウィンク付きで、ばちこんと決める。


この瞬間、アレンがレイの究極の愛の告白に返答したのは、言うまでもない。


そしてレイが鼻血により卒倒したのもまた、言うまでもない。








宇宙最強の愛、爆誕



(これからは僕が君を知っていかないとね)









※このお話はフィクションです。



「ストーカーは犯罪ですよ!
良い子は真似しないでね!」

「君が言うんですか、ソレ」

「結果オーライ☆です!」




 

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