短編集

□シャボンがはじけた
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「一緒にお風呂、入る?」










何を言ってるんだ、この白髪は。





「何を言ってるんだ、この白髪は」


「思考が口に出てますよ。」


「ごめん、思わず口が滑って」





アレンの部屋でまったりとする休息の日。

二人とも読書に勤しんだり、時々ポーカーなんかをやったり、これまで健全に過ごしたじゃないか。

目の前で何ともないような顔をしているアレンに、思いっきり嫌そうな顔をしてみた。





「いつもより可愛いんじゃないですか、
その顔。
ずっとそのままでいなよ。」


「衝撃的な言葉聞いちゃったんだけど今。
あれ?私あなたと恋仲でしたよね?」





話は戻るが、ヤツは先ほど混浴をしようと言い出したのだ。

これを度外視することなど許されない。

許されないというかあってはならない。





「あってはならないのだよ、ウォーカー君。」


「ならコレは破っちゃおう。」


「は?

……、報告書ーーーッッッ!!!」





油断も隙もあったもんじゃない。

いつの間にか、奴の手には昨日の任務の報告書が握られていた。

一晩かけて仕上げた努力の結晶、私は確かにコムイさんへ届けたはず……。










「昨日、ラビと会いましたよね」


「え、なに。えっ?」


「会いましたよね。」


「…………ハイ。」





報告書をピラピラさせ、目の前の悪魔はニッコリ笑った。





「ラビは優しいですねぇ。
わざわざレイの報告書まで、届けに行ってくれるなんて。」





(あっ!?

そういえば、ラビに頼んだ気が……っ)










みるみる顔面蒼白になるレイ。



そうであった。

昨日の夜、報告書を完成させてから室長室に向かう途中、偶然にもラビと会ったのだ。

彼も同じ用件だったらしくて、「一緒に持ってく」と珍しく殊勝なことを言ってくれた。

それに甘え、部屋に帰って熟睡したのは、記憶に新しい。





「ちょっ、返してよ!
もしかしてラビから!?」


「びっくりしましたよ。
談話室から部屋に戻るとき、レイが密会してるのかと思って。」


「ラビと浮気なんて有り得ませんんんん!!」





それを聞くと、彼は更に笑みを深くした。










「なら、お風呂入りましょうよ。」





なんでそうなる。





「待って。"なら"っておかしくない?
全然順接の接続語じゃないよね?」


「細かいこと気にすると禿げますよ。」


「誰が禿げるか!」










ぱちっ。





「!」



アレンと目が合う。

銀灰の瞳が、まっすぐに私を見据えたあと、

仔犬のように揺れた。





(あ、っ、___ダメだダメだ!!)





私は、この目に弱い。





「嫌ですか……?」





悲しそうに見上げてくるアレン。


くそう。自分の顔の良さを知っててやってる。


あざと王子め!






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