短編集
□鈍感な彼女
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僕には最近、悩みがある。
「あっ、アレーン!」
「レイ、」
まずは、その聞き心地が良い優しい声に心臓を高鳴らせ、
次に、彼女の可愛らしい表情を認めたあと、
最後、自分にどんな用があったのか聞く。
レイと話すとき、大まかにこんな事を意識しながら、そのひと時を楽しんでいた。
つまり、僕はレイが好きということ。
教団でもずば抜けて愛らしく、みんなから慕われるレイを、何とか自分だけのものにしようと、日々奮闘している。
……だが、冒頭述べたように、ある苦悩があるのだ。
それは_______
「見て見て!香水貰ったんだ〜!」
「……香水、ですか。リナリーから?」
「ううん、探索部隊の人から!」
「…………」
それは、レイが、
めちゃくちゃな鈍ちんだということ。
「……レイ。男性から女性に香水をプレゼントするのは、"貴女と親密な関係になりたい”って意味が込められてるんです。」
「えっ……!
あの人とはよく話すのに、まだ他人だって思われてたのかな……!!」
…………この通りである。
任務の時は、必要な情報伝達も難なくこなし、支障が出ることは殆どないのだが。
どうも、恋愛に対する奥手具合がこうさせたらしい。
「……はぁ〜」
「?……どうしたのアレン。」
「なんでそんなに鈍感なんですか……」
「えっ?鈍感って、なにが。」
レイは、人からの好意だとか、下心だとかが分からない。
彼女の中にある、"好き”は、
恐らく[like]一択だろう。
まあ、その鈍感さだからこそ、これまで恋人を作らなかったのだろうが。
(恋人になりたいという人は山ほどいるというのに。)
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