泣き虫DAYs

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迸る血液。



雷のような罵声が聞こえる。



埃臭い小屋の中だった。















__殺すんじゃねェぞ__



__分かってら__















あれ



こいつら二人だけだった?















__生意気に反抗してきやがって__















なんだ、もう一人はそっちに居たんだ。










(そっちって、どっち……?)










「………………クソ、野郎ども

地獄に 落ちろ……」





唇が切れたらしい。



口を動かすたびに激痛が走る。



殴られて腫れふさがった目には、蹴られ続ける少年の蹲った背がほんの僅かに見えた。










__まだ喋れたのかよ__



__もういっぺん言ってみやがれ、ガキ!!__










ヤバそうな一発がきそうだ。



眩暈のする最中で、そう悟って目をぎゅっと瞑った。




















「レイ」





しかしいくら待っても衝撃は訪れず、恐る恐る瞼を開けると、眩い光とこちらを覗き込む人影が見えた。



「そろそろ朝食よ」



リナリーが笑っている。

そうして少し間を置いて、漸くあれは悪夢だったのだと気がついた。










随分と生々しい感覚だった。



殴られたあとの熱すら感じた。



それは、疼くような熱だった。




















「おはようございます、リナリーとレイ」


「おはよう。アレンくん」


「……はよう」





宿場の食堂では、既に男性陣が朝食のスープにありついていた。


おおかた、アレンが腹を空かして皆を急かしたのだろう。


リナリーたちと中国本土にて漸く再会したのは、昨日の夕刻に近い頃だった。


予約していた寝台列車にクロウリーの件で遅れをとってしまい、少し時間と費用が掛かったが駅近くの宿場に泊まることにしたのだ。





「まだ寝惚けてるんさレイ?顔色ワリィぞ」


「平気」





リナリーら二人も席につき、それぞれの朝食が始まった。

緩やかに時間は経過し、徐々に周りの人も疎らになってくる。

コーヒーを啜りながら新聞を捲る老人と、皿洗いをする宿の亭主以外に、誰もいなくなった頃。





「早朝、本部から通達があった」





ブックマンの言葉に、皆は一斉に注目した。

彼はいつも通りの仏頂面で、淡々と述べていく。





「以後、新たなエクソシストを加え、中国本土にて元帥の捜索を続けよとの命令だ。」





レイは彼の言ったことを小声で反芻し、使っていたスプーンを静かに手放すと疑問を呈した。





「それは……クロウリーもセツも本部でイノセンスの武器化をせずに、このまま同行するということ?」


「いや。

新たなエクソシスト"一名"は、先日の報告から考察し武器化の必要性がないとされ、我々と共に首都へ向かう。」





ブックマンの目は、ゆっくりとセツに向けられた。



「おぬしのイノセンスは不確定要素が多々ある。これより参る使者と共に、一度教団へ戻られよ」


「……了解。」










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