泣き虫DAYs

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干からびてもなお、最後の力を宿したクロウリーは、エリアーデの首筋に噛み付いて血を吸った。





水を失っていた彼の体は、あっという間に元に戻り、代わりにアクマは服だけを遺して消えていった。





アクマが消えたことで、その能力であったボールが次々と割れ、今まで散々に水分を吸収していたのが城の中で降り注ぐ形となった。





それはまるで、雨のように。




















「___!

ちべてっ!」



「えっ…………雨!?」



「へえ、これまた奇っ怪だな。」










花に拘束されていた二人と、突如現れた不思議な青年も、まだ止むことのない通り雨に目を見開いた。





水に触れてみるみる力を無くした食人花から解放され、アレンとラビは先程まで対峙していたクロウリーらの元へ行った。










「クロウリーさん……?」



「ってアレン、あの男どっか行ったんだけど」



「知りませんよ。」










解かれることのないアレンの左目は、クロウリーを探すのにきょろきょろと辺りを探っており、青年の行方については深く考えていないようだ。





確かに、新たなエクソシストを逃すことも出来ないので、ラビも彼を探すのにようやく意識を向けた。






























「風邪引くぞ。」





声を掛けても、ピクリとも動かぬ少女。


雨に打たれ、そのプラチナブロンドの髪は鈍く輝いていた。


自分に背を向け、ある1点だけを見つめるレイに、セツも目をやる。










そこには、花の上で打ちひしがれるクロウリーの姿。










「___……………俺は、クロスさんに頼まれて、このアレイスター城を監視していた。」





今度は、レイはこちらに顔を向けた。


セツはクロウリーをじっと見つめ、再び口を開く。





「その真意はどんなものか、頼まれた当時の俺は不思議に思っていたが……。

すべては、ふたりの為だったんだな」





雨か涙か分からないくらいに頬を濡らしていたレイは、それに答えるよう言った。





「マリアンは、そういう男だよ。」










そこには、ただ雨の打つ音だけが、
静かに響いていた。





























アレンは、ようやくクロウリーを見つけた。





伏せられ、長い髪に隠されたその表情は、二人には分からなかった。





ふと、彼の口が開く。










「___………この、アホ花………………。」



「「…………え"?」」





「…………………ッッ、

ブス花クソ花グロ花

ウンコ花ーーーッッ!!!






これには、当然の様に食人花は怒り、巨大な口で三人ごと食らいついた。





「うわぁあああッ!!!」

「クロちゃん何やってんだーッ!!!」



「うるさいである!!!」





クロウリーの鼻声に、アレンは驚いて彼を見る。










「___私は、エリアーデを壊した……



もう……生きる気力もないである……。」










涙を幾筋も流し、絶望の表情が浮かんでいる。







((自殺かいーーーっ!))



「(しかも巻き添えさ)」

「(しかも巻き添え……)」





すっかり性格が豹変し、情けなくも大泣きする彼に、先程までの性格を重ねて驚く二人。





「さあ私を殺せである
ドアホ花ーーー!!!


「「ぎゃああああッッ!!
やめろボケーーー!!!」」





さらに威力を増す花に、危うく死にかけるところだった。










「落ち着いてくださいっ!!」



アレンが何とかしてクロウリーの口を抑える。





「___!

右腕、負傷してるじゃないですか。」





そこには、エリアーデとの戦いでまだ紙のようになっている右腕があった。





「こんなもの……。

またアクマの血を飲めば治るであろう……。」





深い後悔を滲ませた声で、クロウリーは己を自虐した。





「はは…………はっ。



とんだ化け物になったものだ、私は………。」










「愛していたものを、手に掛けてしまった。」










アレンの銀灰色の瞳が、炎のように揺らぐ。





蘇ったのは、マナの記憶____。










「死にたい…………。」










愛する者を喪ったとき、人は自分をも手に掛けようとする。





酷く自己中心的な生き物だからだ。





辛い時、誰もが自分を見失い、心が麻痺したようになってしまうから、





きっと悲劇は繰り返される。






























「_____そんなに辛いなら、





エクソシストになればいい。」





クロウリーの胸倉を掴み、しかしそれでも穏やかな声で、アレンは呟いた。





「エクソシストは、アクマを壊すんですよ」










「あなたはエリアーデというアクマを壊したんです。」










「そして、これからもアクマを壊し続ければ、それがエリアーデを壊した"理由"になる。





理由があれば、生きられる…………。」






























「理由の為に、生きればいいじゃないですか。」




















___あなたもまた、

神の使徒なんだ……___









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