泣き虫DAYs
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「くっそぉ…………もう朝になっちまったじゃねぇかぁ、」
ゼェ、ゼェと荒らげる息が、しんと静まった森に響き渡る。
クロウリー城を目指し、徒歩で移動していたセツたちは、遂に薄暗く佇んだ例の場所に辿りついていた。
「あんにゃろ、行くなっつったのに……」
脳裏に浮かぶのは、教会で出会った不思議な少女·レイ。
仲間が何やらって、きっと同じ"エクソシスト"のことだろう。
すべてを分かりきった脳内で、それでもまだ恐怖心は蔓延っていた。
「…………なぁ、テイル。
俺だって、戦える、よな。」
「チュンっ」
飛行していたテイラー二は、急降下して肩に止まった。
それから、肯定するように囀る。
言葉を理解してるような彼の仕草に、思わずセツは笑みを零した。
「……んじゃ、いっちょ不良少年少女どもの肝試し大会に、飛び入り参加しますかね!」
ドン___ッッッッ!!!
アクマ化したエリアーデに叩きつけられ、壁に激突したクロウリー。
ラビと戦って衰弱した彼に、強い衝撃が襲いかかった。
「あ"っ…………が……………………っ!!」
血を吐き、苦しむ姿を見てもなお、愛人であったはずのエリアーデに迷いの色はなかった。
それどころか、罵倒の数々を散々に浴びせ、クロウリーをどんどん貶していく。
「うまく飼い馴らして利用してやるつもりだったが、もういいわ!!
お前をエクソシストにさせるワケにはいかないんだ!!
殺してやる!!!」
その言葉に、クロウリーの目は大きく見開かれ、徐々に涙が溢れた。
その時、食人花が床を突き破ってきた。
餌食になってしまったアレンとラビが、逃れようと必死に対抗している。
それらを一瞥したエリアーデが、さらに続けた。
「フン、
じーさんの形見が、エサが欲しいって泣いてるわよ。
あんたの血肉でも与えといたげましょうか?」
幾筋も流れる涙は、痛みを伴い胸に押し迫る。
それでも、クロウリーは自分に課せられた運命を、エリアーデの言葉から知ってしまった。
自分と、彼女が演じるべき役を。
「愛してたのに……………………」
これは、きっと喜劇だ
愛していた女には、愛されてなかった
こんなに滑稽な話があるか?
惜しくも伝わらない、互いの想い。
交錯して、すれ違って、交わりなどしない想いが、
ついには激しく衝突しようとした。
「初めてお前を見た時から、ずっと…………」
「お前に見惚れていた私を」
「敵ならば、どうしてあの時殺さず今まで側にいたのだ」
出会った日の、あの森の情景が、今でも瞼の裏に浮かび上がる。
ざわめいた木々も、すんとした青草の匂いも、
確かに高鳴った心臓さえ、
「だから利用したって言ってんでしょ」
「やってみたいことがあったのよ
そのために、正直ずっとあんたを殺すのを我慢してたの…………」
噎せ返る嗚咽。
悲しみに明け暮れ、クロウリーの頬は涙で散々に濡れていた。
だけれど、このままでは居られなかった。
「そうか………………。
お前は、本当にアクマなのだな……………………」
ペロ、と手の甲についたエリアーデの血を、舐めた。
これまで、ずっと味わい続けてきた衝動が、自身の中で欲を膨らませ戻ってきた。
血の味が、堪らなく欲しい。
「私も…………
ずっとお前を殺したかった!!!」
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