泣き虫DAYs
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「………………な、」
何だコレは。
声にならない叫びが頭の中に響き、飛びずさった時擦ってしまった掌の痛みさえ忘れた。
いきなり目の前に現れた光が、一瞬にして彼女を包み込んでしまったのだ。
「は、まじで、なんなの………………」
ぱちくり、と目を瞬かせても、消えることのない強烈な光。
もう包まれた娘は見えなくなっているが、きっとあの中に居る。
真夜中にも関わらず、中から昼のような光が漏れていて、村から戻ってきたテイラー二は困惑したように囀った。
急いで主人の元へ行くも、眩い光に大慌てで飛び交ったテイラー二。
しかし、そんな眩さもやがて衰え、徐々に細くなっていった。
見え始めた娘の姿。
そこには、先程までの顔色悪い死人みたいな様子は微塵も感じられず、
安らかに眠る天使のような少女が横たわっていた。
しかし、美しいプラチナブロンドのロングヘアはなぜかショートになっており、身体までボロボロの状態と化していたワケだが。
「……………………!!!!……………ッッ、」
ゆっくり、娘の方へ近寄った。
ああ、わたしのレイ
離れようとしても無駄よ
わたしたちは 深いところで繋がっている
肉体と精神であるように
母と子であるように
光と影であるように
貴女は、創造の7日間を知っている?
(知ら、ねー…………って、
言ってんだろ…………_________!!!)
またもや脳内で反響するイヴの声。
あー、ホントにイライラするこれ。
やっと意識を取り戻したレイは、
ガバッと勢いよく起き上がる。
ごんッ_______!!!
「ふぎゃっ!!?」
「痛っだ……………ッッッッ!!!」
しかし、目の前にいた人物と額同士を思い切りぶつけ、二人して悶絶した。
「え?ダレ?」ズキズキ
「くぅ〜〜〜…………ッッ!!
………………発光したり急に目ぇ覚ましたり、
何なんだ君………………」
目の前でまだ悶える青年を見つけ、レイは頭を抑えながら聞いた。
彼は目を潤ませ、こちらを見据える。
「……俺は、セツ。
この教会の管理を任されてるんだ。
神父じゃないけど。
で、君は誰なんだ?」
もう空は、白みはじめていた。
(ぁーーー、これ絶対赤くなってるよね)
まだジンジンと痛むおデコ。
それでも、私は行かねければならない……。
「ダメだってンだろ…………ッッ!」
「イヤだぁぁぁ!離してよ馬鹿!」
「アホか!!あの城は恐ろしい吸血鬼がッ、住んでるんだぞ!!」
「さっき私の仲間から無線が来てたの、聞いてた、デショ…………ッッ!!!」
「大体ッ、さっきまで倒れ込んでた奴がッ、無茶してんな!」
教会の目の前で、激しい腕の引き合いが行われていた。
クロウリー城に向かおうとする私と、それを止めようとするセツ。
彼が心配してくれてる気持ちはありがたい。
だが先程の、ラビから来た無線の内容が、頭から離れないのだ。
___レイッ!?
悪ィ、置いてって!
謝るから仕置きは無しにしてちょ……
そんで、オレらが今いんのはクロウリー城
吸血鬼退治に巻き込まれたってカンジなんだけどさ
"何か”ありそーさ……
てなワケで、出来れば援護に来てほしッッ___
___何をゴチャゴチャ言っている童めがッッ!!___
___うぉっ!!ちょっとタンマさ!!___
_____ブツッ_____
ここで、連絡は途切れた。
内容からして、彼らが城に居ることは間違いない。
だから、ラビの助けを求める声にすぐ城へ向かおうとしたのだが______。
「私なら大丈夫なんでッッ!!」
「どこで大丈夫なんだッ!
服もボロっボロじゃねーかよ!
てかコレで隠せッッ!」
顔を赤くしたセツに、ばっ、とチェスターコートを渡された。
所々、肌の見えている自分の姿を見て、漸く気付いた様子のレイ。
「うわおっ!ホントだ。
このまま行ったらラビに襲われるトコだった……。」
「いぃから早く着ろっ!」
団服はなぜかボロボロだ。
耐久性はある筈なのに、どうしてだろう。
頭に疑問符を浮かべつつ、素直にコートを受け取った。
「_____よしっ。
コレで行ける。」
「行かせるかッッ!」
満足げにコートを羽織った私は、髪をコートに入れようとして、ある事にも気が付いた。
「…………あれ?髪が、ない?」
いつもある筈の長ったらしい髪が、なくなっている。
変わりに、手についたのは短くなった髪の毛先。
「…………お前が、変な光の中から出た時既に、そうなってたんだ。」
「………………………、」
気まずそうなセツが、ぱっと腕を外した。
彼のせいでないにしろ、髪は女の命というから、レイがショックを受けてると思って気遣ったのだろう。
しかし、ぎょっとしていたレイは数秒後、
「……まぁ教団の理髪師に頼むよりかは手軽で良かったや」
「へっ?」
「手、離してくれてありがとー」
にっこりと微笑みかけた彼女にまたもや顔を染めたのも束の間、付けていたグローヴが光ったと思ったら、レイは空を飛んでいた。
「んなッッッッッ!!!!?」
摩訶不思議な光景に、開いた口が塞がらない。
軽々と雲の間を縫うように飛んでいくレイを、セツは目を見開き見つめていた。
「チュッ、チュッ、」
「!……テイル…………________」
いつの間にかセツの周りを飛んでいたテイラー二は、恐らくレイにビックリして隠れていたのだろう。
だが、彼女が向かった方向を向いて、セツの髪を引っ張っている。
これはつまり、行けってことか。
「…………はぁ、
悪ィクロスさん。俺これからあの城行ってきます」
あの日の約束を破らねばならなくなったけど、テイラー二が言うには村人だけでなく外部の人も巻き込んであの城に向かってしまったらしい。
神父さんに謝ってから、身なりを整えたセツとテイラー二は、真夜中の旅に出かけた。
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