泣き虫DAYs

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ズド……ン_______





「…………?」





病室の外から、何やら破壊音が聞こえて、ラビと無線で会話してたレイは扉を振り返った。





「…………………あぁ、お見舞いにきてくれたの」





レイは口角をくっと上げ、呟いた。





「わざわざ遠方から来たからには……。

私も歓迎しなくちゃだね、」





キィィ……と開かれた扉の先、レイが迎えたのは______

































アレンとラビは、あの後町中で大規模なアクマの襲撃に遭い、瓦礫の中で、何とか全て破壊し終え疲れた体を横たえていた。



「何体壊った?」



不意にラビが話しかけてきた。

正直そんなの覚えてないが、感覚だけで答える。



「30……くらい」

「あ、オレ勝った。
37体だもん。」

「………………。そんなの数えませんよ」

「オレなんでも記録すんのがクセなのさ〜。」



疲れきったこの状態で、ラビはただそんな事が言いたかったのかと呆れていれば、よ、とラビが身を起こす。








「____あンさぁアレン。」


「……何ですか、」


「レイと知り合って、どんくらい?」


「はぁ…………?」





またもや唐突な質問に、荒い呼吸の中アレンは驚いたような声を出す。





「なに変なこと、言いだすんです……」


「いいからいいから」


「………………………。

3ヶ月くらい…………?」


「オレ勝った〜」


「、……。
いい加減しつこいですよラビ…………」


「ぶはっ!……くくく」





今度は笑い出したりと、随分いそがしい人だ。とか思ったりするけど、結局は「勝った」なんて言われて悔しい気もする。

まだ笑いを含むラビの声が、耳に届いた。





「……まぁまぁ。そう怒んなよ。」


「別に怒ってないです」





いや完全に怒ってんだろとでも言うような視線を感じたが、この際無視である。

だが、そんなアレンの態度とは裏腹に、





「オレが言いたかったの、自慢じゃなくてさ。

なんかお前ら、すげぇ相性良さそうだなって思ってよ。」










この男は、人を呆れさせたり、或いはビックリさせたりが得意なのではというくらい変な事を言う。





「……………………………はい?」



「オレがお前のこと間一髪で助けられたのも、レイから連絡来たからでさぁ。

まあ元々、お前の機嫌取りには行くつもりだったんだけど

「機嫌取りって何ですか」

まあ聞けって。

無線でレイが早くアレンとこ行けって言ったんさ」





「アレンの左目、今は使えてないからアクマに襲われそうになったら危ない」、と心配そうに言ったレイの声が、脳内に蘇る。

そいで急いで行ったら、レイの言った通り襲われてて、





「お前らの相性凄そーだなって思ったワケよ。」





アレンは、まだ目を見開いたまま、茫然とラビを見ていたけど、ちょっと頬をピンクに染めた後すぐに顔を背けた。

初々しいその様子に、またラビは笑った。





「相性とかの問題じゃないでしょ……
ただレイの勘が鋭かったり、とか」


「でもお前ら、リナリーの病室で仲良さげだったじゃん?
コムイも悲しそうな面してたぜ」


「あれ、は…………。」





否定するアレンだけど、傍からみれば"そういう仲”に見えなくもない、とラビは言う。


案外、何かありそうだなこの2人、


と、笑いながら思った。





(レイも、あんなにスキンシップが激しくなるのはずっと一緒にいた奴らぐらいなのに、な
不本意だけど)




















その後は、だんだんアクマの事に話が回っていき、話の内容も変わっていった。



「しっかし、合わせて70か…………。

単純にオレらだけに向けられた襲撃だな

3人が負傷してるのを狙ってか…………」



バンダナを直しながら、推測を立てる。



「はたまた何か別の目的か…………」

「!」



その瞬間、妙にレイに執着していたロードの姿が浮かんできて、アレンはじっと考え込んだ。



(レイ…………ロードに何て呼ばれてたんだっけ。)



でも、人間を嫌ってると言った彼女が、あれほどレイを大切にしていたのは、何かしら関係があるかもしれない。

アレンは、レイが伯爵側と繋がってるなんて思いすらしなかったが、ラビにロードの話をするのは危惧がある気がして、黙ることにした。





「大丈夫かな病院……。」





起きていないリナリーや、まだ自由に動くことが出来ないレイが突然心配になってきて、アレンが身を起こす。

しかし、



「痛て!!」



左腕が鋭くズキッッと痛んだので、体を震わせた。





「ダイジョブか?
まだ完治してねんだろ、その左。」

「まぁね……。僕もラビたちみたいに装備型の武器がよかったな。」





深いため息と共に、寄生型の不便を愚痴るアレン。

そこで、ラビが何か考えついたらしく、


「…………………病院てあっちの方だよな」


と言った。




「え……。うん、多分」

「ここ握って、」




彼のイノセンス、槌の柄を握らされ、アレンは訝しげに尋ねる。


「何?」

「大槌 小槌…………」


答えることなく、ラビが唱えた。










「伸!!!」

「い"っ!!!??」





まっすぐ病室の方向に向かって伸びる槌の柄。

だがそのスピードと勢いが尋常では無かった。





「うわあああ!?
どわあああ!!!」



「病院まで 伸伸伸ーーーんっ!!」










ギューーーンッッと飛んでいく彼らの姿を、街の建物の影から窺って、姿を消したアクマが、一体いた。




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