泣き虫DAYs
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不気味な笑みを浮かべている玉子。
銀色のスプーンがサクッ、とそれを掬い、隆々とした男の口元まで運ばれる。
だが、口に合わなかったらしく、咀嚼されたそれははしたなく吐き出された。
「……甘くねェじゃん」
ふと零した言葉の後、重い衝撃音がその場に響いた。
「このポンコツがあ!!!」
男が、そばに居たメイドを殴ったのだった。
しかしそのメイドは、よく見ると機械の骨組みを皮の下に隠しており、その正体まで見るも無残に殴られ続けた。
「このクソッ、ボケアクマ!
甘くしろっつったろーがッッ!!!」
ゴッ、ガッ、ドコッ____
破片が飛び散り、もう原型も取り留められなくなったアクマ。
いい加減痺れが切れたのか、円形の同じテーブルに着いていた別の優男が、
「おいおい、食事中にグロいもん見せんなよ。剥けてんぞ」
と注意した。
殴っていた男の腕が、おぞましい化け物の肌と化しており、まるでその身に"怒り”を表しているよう。
「帰る!お前たちとは味覚が合わない」
玉子を甘く、などと無理な注文をするぐらい、この男は甘党らしい。
何人も面妖な姿をしたこのお食事会を、自ら退席すると申し出た。
「ンだよ、タマゴくらい食えっての
この甘党!」
「落ち着きなよぉ。せっかく家族でメシ食ってんだろぉ」
優男の隣に座る少女も、咎めるように甘党の男を睨んだ後、笑みを浮かべて一つの席を見た。
「なあ、千年公?」
シルクハットをリボンでぐるぐるに巻き、品よくナプキンをその燕尾服に掛ける人物。
尖った耳に人間離れしたその顔は、玉子を食べながらも不気味に笑っていた。
この多くの絵画が並び、黒肌の男女と千年公と呼ばれる男が円形テーブルで話を交わす部屋では、"ただの食事会”とは違う雰囲気を醸し出している。
未だ笑みを張り付けた少女が、この"食事会”に招待された本髄を聞き出そうとする。
「気分直しにさぁ、そろそろ僕たちをメシに誘った理由を教えてよぅ」
その言葉に、退室しようとしていた甘党の男も、くるりと振り返った。
優男までも、微笑んでいる。
「もしかしてさぁ、
そろそろ始動ってやつぅ?」
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