泣き虫DAYs
□序章
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夜明けが近い。
そろそろ日が昇り、またこの世界は明日を迎える。
今日という日に取り残された人を置いて。
そうやって、人類は進化をしてきた。
進化をしなければ、自分もまた"昨日”に取り残されてしまうから。
「レイちゃん、」
下でコムイが呼んだ。
"昨日のじかん”はもう終わりかと、退屈そうに見下ろせば、彼は笑っていた。
ちょっとだけ、寂しそうに。
「冷えてきたろう。中へお入り。」
言われて気付いた。
確かに、裸足だったレイは、足先がすっかり冷え、赤みを帯びている。
手も同様に、感覚がなくなっていたから気付かなかったのかとぼんやり見る。
「……いま、いきます」
掠れた少女の声に、コムイは心配そうな眼差しを向けた後、彼女の言葉を信じて踵を返した。
レイがいるのは、黒の教団の少ない敷地に佇む木の上。
細い枝がいくつも伸びていて、そこに座ると、広大な景色が辺りに広がるから、まるで大きな絵を鑑賞してるみたいだった。
それはそう、私だけいない、
美しい絵……。
(みんな、待ってる)
黒の教団で、みんな。
きっとリナリーも。
くだらない事を考えるのはやめよう。
なぜなら"今日”になったから。
木から下り立つ時に見た遠くの空は、
その柔らかな雲から光が差し込んで
瑞々しい世界の、終わりの始まりを
微笑んでるようだった。
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