泣き虫DAYs
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「ラビ…………っ、どこだよ…………!?」
屋敷内を走って、仲間の姿を探すレイ。
だが、一向に居場所の分からない。
焦燥の心と、深い後悔が、彼女を苛んでいた。
(…………なんであんな事、口走ったんだろ)
エリアーデという<アクマ>に、自分のことを話すなんて、初めてのことだった。
いくら自我を持つレベル2であっても、アクマはアクマ。
破壊するのが、私の仕事だというのに。
何故か、彼女を見ていると、無性に過去を思い出してくるのだ。
(…………今はラビ探しだ。)
悶々と考え込んでしまう頭を振って、また一歩と歩み出す。
しかし、
___________ドクン、
「が…………っ、は…………ッッッッ!!!!」
心臓が、軋むように痛んだ。
脈打つ全身の、細胞ひとつひとつが、
熱をもって蠢く感覚。
「くっそ…………、………!!
やっぱ、アレからおかしく………ッ!?」
蘇るのは、教会でのあの出来事。
何か、自分のナカに、意思を持ってるもうひとつの存在がいるかのよう。
これは、きっと、もう確信的に……
「てめぇだろ、イヴ…………ッッッッ!!!」
冷たい石畳の床へ這いつくばり、心臓を抑える。
未だ、激しい鼓動は鳴り止まず、寧ろ勢いを増して脈打っていた。
噎せ返るようなその激しさに、軽く嗚咽を漏らす。
("さっきの”も、見間違いじゃねーのな……)
隠し扉があって、アレンがエリアーデに襲われていたあの書庫。
そこでレイが見たのは、所謂、
アクマの魂_______
(は、……ついに、呪われちゃいましたってか?)
ゴホッ、ゴホ、と咳をしながら、自虐的に笑う。
しかも、アクマの製造前の記憶や、名前まで、はっきりと頭に浮かび上がったのだ。
まさかの第二アレン誕生?と口角を上げるも、また襲いかかる嗚咽。
「ぐ………………ッ、…………ゲホッ、っ!!!」
咳とともに、何かが出た。
驚いて床を見ると、月明かりに鮮明な赤色が見えた。
吐血だ。
(…………っち、喉でも切れたか……?)
だが、だんだんと血の量も増え、ついには涙まで溢れてきた。
それには生理的なものも含まれてはいた。
しかし、エクソシストと言えど、まだ15歳の女子供。
突然の体の変化に状況処理がしきれず、恐怖心もあったからだろう。
繰り返すような熱い血の巡りと、喉の奥が焼けるような吐血、初めて味わったそれらに、レイは悶え、足掻き苦しんでいた。
突然、爆音が鳴り響く。
「…………っ、!!?」
壁が破壊され、突き破ってきたと思わしき人影が、遠方にちらりと見えた。
まだ床に手を付きつつ、レイはそっと様子を伺った。
(………………ってアレ、ラビじゃね、)
舞い上がる砂埃の中、ふと赤毛が視界に入る。
彼の乗っている細長い棒は、恐らく例の如意棒だろう。
あれには良い記憶が無いので、レイはぐっと顔を顰める。
しかし、すぐにその浅緑の瞳は大きく見開かれた。
「ぇ………………、」
「ぐっ…………おのれェ…………ッ!!!」
レイをラビの元へ向かわせた後、アレンはアクマ化したエリアーデと対峙していた。
激しい闘争の末、ようやく優勢をとって壁に追い込んだアレン。
壁を突き破ったエリアーデが、こちらを睨むよう見据えている。
(何よ、このクソガキ……!!
さっきまで、ボロボロだったくせに!!)
さっき、とは。
あの書庫での事だ。
されるがまま、エリアーデが殴るも蹴るも自由に許していたアレンは、左目に変なのを浮かび上がらせた途端、急に元気を取り戻していた。
そして、妙な女のことも、エリアーデの心を一層に掻き立てていた。
(わかる、って、なにがよ、)
頬を歪ませながら、エリアーデの自我は苦しむように肩を震わせる。
それを、彼女を追って飛びだしたアレンの左目が捉えた。
「……?」
不思議そうに見つめてはいるも、アレンにとってエリアーデはアクマ。
"救済”すべき存在である。
一刻も早く、この世の苦しみから解き放ってあげたいという思いが、心の奥に燃え滾っていた。
本当に彼女が望むものは、ソレじゃないのに。
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