泣き虫DAYs

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「あの……<大事なハート>って……?」



アレンがコムイに訊く。

聞き覚えが無かったのだろう、眉を顰めている。





「我々が探し求めている109個のイノセンスの中にひとつ、

<心臓>とも呼ぶべきイノセンスがあるんだよ。」








_______それは、すべてのイノセンスの力の根源であり、すべてのイノセンスを無に帰す存在。

それを手に入れて、初めて我々は終焉を止める力を得ることができる。








「伯爵が狙ってるのはそれだ!」



コムイの鋭い眼光が、虚空を睨みつけた。










「……………。」





「そのイノセンスはどこに?」

「わかんない」





さっきまでの神妙さはどうしたのか、コムイはいつものコムイに戻っていた。



「へ?」

「実は、ぶっちゃけるとサ。
それが、どんなイノセンスで何を目印にそれだと判断するのかキューブにかいてないんだよ〜。」



頼りない発言に、アレンは停止する。
他の人たちも、驚いた顔だ。



「もしかしたらもう回収してるかもしんないし、誰かが適合者になってるかもしんない。」



長々と不満を零すコムイは、「だから分かんないの!」と最後に締めた。



しかし、今いえることは、まだハートは壊されていないということ。



ハートが壊されれば、すべてのイノセンスが無くなるからだ。





「ただ、最初の犠牲者となったのは元帥だった。

もしかしたら伯爵は、イノセンス適合者の中で特に、力の在る者に<ハート>の可能性を見たのかもしれない。」



当然の考察だ。

ハートは、イノセンスの根本の力なのだから。



「アクマに次ぎノアの一族が出現したのも、恐らくその為の戦力増強。


エクソシスト元帥が彼らの標的となった。


メッセージはそういう事だろう?」





これまで黙ってきたレイは、目を見開いてコムイに尋ねた。





「え…………、コムイさんたちの所にも、伝言があったんですか…………!?」





血相を変えたレイに、一同はビックリしたみたいだが、コムイは冷静に答えた。





「あぁ…………。も、ってことはレイちゃんの所にも、アクマが?」


「えっ、いや…………ハイ。」





"イヴ”についての情報は伝えられないことから、きっと彼らの元に届いた伝言には、その下りは無かったのだろう。

今はまだ、コムイに話したくなかったので、そのまままたレイは口を噤んだ。





「_____恐らく、僕たちやレイちゃんに届いたメッセージは、各地の仲間たちにも同様に送られているハズ。」





その言葉にさえ、何も言わなかったレイ。





「確かに、そんなスゲェイノセンスに適合者がいたら、元帥くらい強いかもな。」



ラビも納得したように頷く。



「だが、ノアの一族とアクマ両方に攻められては、さすがに元帥だけでは不利だ。」



そこで、とコムイは言う。










「各地のエクソシストを集結させ、四つに分ける。



元帥の護衛が、今回の任務だよ。」





残った4人の元帥。

確かに、そうした方が確実に襲撃は免れられる上、エクソシストの集合も保身に繋がるだろう。





「君たちは、クロス元帥のもとへ!」






























レイはちょっと考えた後、口を開く。





「あの……。じゃあ私は、このままアレンたちと別れて行動ですよね。

確かクラウド元帥はイタリアの方だし。」



「え!?レイと別れるんさ、コムイ!?」





ラビが残念そうに言うが、コムイはハテナを浮かべながら言った。





「え?レイちゃんもクロス元帥の護衛だよ」



「…………………………はい?」





思わず間抜けな声が出たが、仕方ないと思う。

だって、私はクラウド元帥の弟子で、当然護衛ならクラウド元帥のもとで……。





「確かに、レイちゃんはクラウド元帥の弟子だけど、今回は特別にクロス元帥の護衛をしてもらうよ。」



「え?何でですか…………?」



「そりゃもちろん、



レイちゃんがクロス元帥に気に入られてるから。」















その場を沈黙が襲った。

事情を知る4人を除き、アレンは驚いて、

レイは撃沈したのだった。





(そうだったさ……クロス元帥、めっさレイ可愛がってたしな!)

(まあ、当然の配置じゃろ)

(レイがいれば、クロス元帥も姿を現すかもしれないわね……)



「えええっ!?そうだったんですか!?」



「うん。

まあ昔の元帥は、教団に帰るたびすぅぐレイちゃんのトコ行って、やれ拳銃だやれ鍛錬だって、ずいぶん構ってたものだよ。」



「やめてくださいよコムイさん……。
思い出したくないです…………………。」





初めて知った、師匠の人間っぽい所に、まだ驚きを隠せないアレンだったが、クロスがレイを気に入るのも分かる。










複雑な気持ちを抱いたまま、レイ含めた6人を乗せる馬車は豪雨のなか先を進んだ。




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