泣き虫DAYs
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ガチャッッッ!
「コムイさん!?ブックマン、大丈夫ッッ…………
って、何この状況……。」
「あ、あははは…………」
壊されてる病室の壁。
何故か、鼻血を出すブックマンに胸倉を掴まれているラビ。
呆れてるコムイさん。
意識が無くてまた怪我をしてるアレン。
そして…………
「リナリーが起きてる〜〜〜ッッ!!」
「レイ!」
やっと目を開けた彼女に、久々に会えた気がする。
「____って貴女、もう着替えてるの!?」
「うーん。病院着じゃ落ち着かなくて、ね。」
「えー!レイちゃん、折角髪出てたのにィ!」
こんな騒がしい面子にいると、自然にさっきまでの事は考えなくなっていて、レイはちょっとだけ救われた気がした。
ドッ、ドッ、ドッと走る馬車。
外は生憎の雨模様で、飛沫を上げながら馬は車を引いていた。
中では、例の6人が腰を掛けていて、漸く任務が始まったらしい。
「それじゃあ、任務について話すよ
………いいかい、3人とも?」
コムイが話しかけたのは、ブックマンに叱られ席でも正座するラビとアレン。
そして、窓から見える雨にぼーっとするレイだ。
「はい……………」
二人は、正座で痺れた足にぶるぶると耐えながらも、コムイに返事した。
「………………レイちゃん?」
「!……はい」
そんな心ここに在らずみたいなレイの様子を、コムイは不思議そうに見ていた。
だが、すぐに説明へ入る。
時間が無いのだ。
「______先日、
元帥のひとりが殺されました。」
その言葉に、驚くような反応を見せる4人。
元帥といえば、エクソシストの中でも臨界点を突破した、強い者たちの名称。
アレンの師であるクロス・マリアンも、元帥である。
しかし、コムイはまだクロスの名を呼ばず、こう続けた。
「殺されたのは、ケビン・イェーガー元帥。
5人の元帥の中で最も高齢ながら、常に第一線で戦っておられた人だった。」
その名を聞き、リナリーは面識があったのだろう、「あのイェーガー元帥が……!?」と声を漏らしていた。
「……ベルギーで発見された彼は、協会の十字架に裏向きに吊るされ、背中に<神狩り>と彫られていた。」
残忍な上に、随分意図性のある手口だ。
(アクマがやった可能性は低い……。)
レイは、ブックマンの隣の窓側に座りながら、そう考えた。
となると、ノアであるかもしれない……。
「<神狩り>……!?」
「イノセンスの事だな、コムイ!?」
正座の痺れなど、この驚愕的な話に忘れてしまったアレンとラビは、コムイに問う。
「そうだよ。
元帥は適合者探しを含めて、それぞれに複数のイノセンスを持っている。
イェーガー元帥は八個所持していた。」
話すコムイにはいつもの彼の影はなく、暗い瞳で事を語っている。
「奪われたイノセンスは元帥の対アクマ武器を含めて九個。」
「九……っ」
なんて大きな数字だろう。
エクソシストたちの顔は歪み、絶望のなかだった。
「瀕死の重症を負い、十字架に吊るされてもなお、辛うじて生きていた元帥は、
息を引き取るまでずっと歌を歌っていた。」
___せんねんこうは……さがしてるぅ♪___
___だいじなハート さがしてる……♪___
___わたしはハズレ……___
___つぎはダレ……♪___
「センネンコー?」
「伯爵の愛称みたいだよ。」
「ほー。」
ラビは知らずにいたのか、なんてぼんやり思いながら、レイは黙っていた。
そうでも思わなきゃ、震えそうになるから……______。
何故かは分からないけど、先程から体が震えて仕方ない………………。
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