泣き虫DAYs

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「……ぁ……いて…………開いてッッ!!!」








「開け!!開け!!開け!!!!」





ぞくり、と背筋に冷たいものが走った気がして、レイは必死に叫んだ。



あっちの時空の主に聞こえるよう、喉が潰れるまで、何度も、何度も。



































___なんで私って、



肝心な時に何も出来ないの?___








滲む視界がぼやけて見えて、思わず下を向いてしまった。





(No.29………………______)





あの時だって、掴んだ手は空を握り、大事なものは指先を掠めていった。






























___…………肉体の限界はあるだろうけど、



"おれたち”には無いはずだろ?_____








「……………………っ!!!!!!」










(……そうだね…………。

私が言ったんじゃんか、ネガティブな人は嫌いって、ミランダに。)




















「_____オン・a・u・m…………



О Т К Р Ы Т Ь l Й______」














叫んで潰れた喉が痛むのも気にせず、また瞳を閉じて意識を深く沈めていった________




































































「ぁ………………アレンくん…………………?」





尖った蝋燭を何十本も向けられ、もう少女に殺されそうになった私。

それを助けてくれたのは、アレンくんだった。

背中にたくさん怪我をして、さっきも、ロードに左目を潰されていて…………










時計に打ち付けられていた杭を抜いたアレン。

腰を抜かしたミランダは、壁際まで逃げた。



「ひぃぃぃぃ〜っ!」



背中を壁にびったりと付け、彼に向き直る。



「アレンくん…………!?」



だらりと頭を垂れ、血だらけのまま座り込む彼に、ミランダは激しい絶望と後悔を抱いた。



呼びかけて応答がないのは、こんなにも心を焦らせるのか。



「アレンくん死なないで…………」



ぶるぶると震え上がり、幾度も流した涙は枯れることなくまた落ちた。

私が、死なせてしまったの…………?



















「……だ、

大丈夫…………………………」





ミランダを安心させようと、傷だらけのまま振り返ったアレンは、力なく笑った。





その姿に、ミランダは、泣きながらも震える手を痛むのも厭わず握りしめる。










「!?」





笑いながら場面を鑑賞していたアクマたちは、驚いたように目を見開く。





「何だメス?」





ミランダがアレンに駆け寄って、肩を抱きしめていた。

怯えた目でこちらを見ているも、先程までの弱っちい面影は見えなかった。





「何やってんだ〜?」





「は……はは……

ホント何やってんの私…………


でも………でも………」





ガタガタとまだ震えて、だけどアレンだけは離さなかった。





「人間に何ができんだよ〜!!!」





アクマが、確実に倒せるだろう一般人と衰弱したエクソシストに向かって攻撃を仕掛けようとしたその時________


































「遅くなってごめん、2人とも」





















大きな風が吹いて、厚く2人を包み込んだ。





小さな、でも偉大な少女の背中をかろうじて見ることのできたアレンは、





「いえ……グッド、タイミングです」





と言って微笑んだ。























「イヴ…………。」





ロードが小さく呟いた。





「どうやって入ってきたのぉ?

イヴから来なくても、僕もうすぐで招待したのになぁ」





たたた、と駆け寄ってくる例の少女。





彼女と会ってから、3日ほどは経っていた。










「___私は、

イヴなんて名前じゃないっつーの!」










べっ、と舌を出すレイの声は掠れていて、ミランダはビックリしたようだった。





(…………レイちゃん、)





店でアクマと対戦していた時のアレンくんのイノセンスや、私の部屋まで飛んでいったリナリーのイノセンス。



それに対して、レイのイノセンスは手袋のようなものらしい。



レイの声に呼応するように光ったそれは、みるみるハーフグローブの形状になって、美しく光る黒色へと変貌を遂げた。










どこまでも逞しいエクソシストの姿だった。










「イヴはイヴだよぉぉ。

僕たちノア一族は、みぃんな知ってる。」



「ノア、ね……」



「聞き覚えがあるでしょお?」










向かってくるアクマに<浄天ノ紐>を巻き付け、次々に破壊しながら、レイは腹立たしげに叫んだ。





「全くもって無いわッ!」





それでも憤ることなく、面白い光を目にたたえたロードは、アクマたちに命令をした。





「お前ら、イヴが遊んでくれるってさ

存分に楽しみなよぉ〜。」





次々と現れるアクマ。

レイはその場に居なかったから分からないが、ロードは伯爵と深い関わりを持つ人間。

アクマだって、自由自在に使える。





(あいつ、アクマとお友達か何かなワケ……!)





めちゃくちゃ苛立ちつつ破壊していくレイ。

その隙をついて、アクマは彼女の後ろをすり抜けた。





「人間の命、頂きィ!!!」



「っ!!!」





しまった、こちらにイノセンスの力を使うあまり、使い慣れない風の力は弱まっていたようだ。

ミランダとアレンにその牙をかけようとアクマが襲いかかる。



































カッ_________!!!










時計の針が、発動の鼓動を刻んだ。







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