泣き虫DAYs

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「……う〜ん」
















女のエクソシストを飾り立て、好き勝手に遊んでる少女。

上には黒の教団の団服を羽織り、一見無邪気そうな少女の近くには、しかし。

手を杭で時計に固定され、血を流し涙する女の姿や、同じく杭で壁にイノセンスを固定されてる少年エクソシストがいて、少女の印象を180度回転させた。



現実とは異なる空間_____"ロードの夢"は、彼女の玩具がたくさんあった。



回りには積まれたプレゼント箱、どこかガーリーな蝋燭、色んなぬいぐるみなど、乙女チックな内装なのに、

そこへ血を取り入れるのがロードの趣味とでもいうのだろうか。









側で控えるアクマに時々"ちょっかい"を出しながら、ロードはエクソシスト_____アレン・ウォーカーの目覚めを待っていた。















突然、ロードが耳を塞いだ。



その様子を不思議に思った付き添いの傘・レロは話しかける。



「ロードたま?どうしたレロか?」



少女のお人形ごっこが一時停止したので、飾られていた人形___リナリーの腕はだらんと膝に落ちた。





「……誰かが、僕の夢をノックしてるみたいだねぇ。」





ふと笑ったロード。

彼女の頭の中には確かに、こちら側を伺おうとする何者かがいた。



「もうちょっと待っててぇ……。

僕はこれから、コイツらと遊ぶんだから、





______ねぇ?」







































「……なんで開かないの…………っ!!」



ひたすらに術を唱え続けても、次元の扉が開く気配は一向にない。



張り詰めた緊張の中で、あちら側の主が私に気付いたのは感じ取れたのに___!!



アレンたちを心配する気持ちが、レイの心を掻き立てる。





(早く、早く____________!!!)






それでも、路地にはレイの虚しい残響だけが残った。




































カーン、カーンという甲高い音に、アレンはその目を覚ました。



「ここは……?」



ぼんやりした思考が、脳を支配している。



___自分のイノセンスが壁に打ち付けられているとも気付かず、ただ彼は虚空を見ていた。



「ア……レンくん」



しかしその時、か細い女性___ミランダ___の声を聞いて、一気に頭は冷やされる。



そうだ、自分は、アクマと戦って……










どうなったんだ?



ここはどこだ?



僕は、何をしてる_____?










もう1度ミランダの声が聞こえたことで、アレンははっとした。



漸く、事態の収拾を掴めたらしい。



ミランダは、同じ空間の少し離れた位置で、手を時計に打ち付けられていた。



「アレンくん………………」



涙を流し、杭で打たれた両手からも、とめどなく血が溢れている。



その姿を目に入れた瞬間、アレンの目が見開かれた。





「ミランダ………………」





名を呼んだその瞬間、左手に激しい痛みが走って、「痛……っ!」と顔をしかめる。



今度は左腕に目をやると、ミランダのように数本の杭で壁にうちつけられていた。



そしてそばに居る、アクマの下卑な笑みで、そいつがやったのだと気付く。










「うん、やっぱ黒が似合うじゃ〜ん」


「ロード様、こんな奴きれいにしてどうされるのですか?」


「お前らみたいな兵器にはわかんねェだろうねェ」





遠くでまた、人の声が聞こえた。



「エクソシストの人形なんてレアだろぉ」



その言葉に反応したアレン。

声が止んで、話していたと思われる少女がこちらを向いた。



「起きたぁ〜?」



風船ガムを膨らませ、アレンに手を挙げる少女の、正面、

ドレスを着て美しく飾られたリナリーが、椅子に座っていた。





「リナリー!!!」





必死で呼びかけるも応答のないあたり、意識はそこに無いらしい。



「気安く呼ぶなよ、ロード様のお人形だぞ」



アクマが、少女の近くにいるも関わらず、襲うどころか"様”付け?

一体、何者なのか、あの少女は。





「お前を庇いながら必死で戦ってたぜェ」



杭を打ったアクマが、面白そうに言った。



「…………っ、」



徐々に思い出してくる、倒れる前の記憶。

そう、自分が意識を失った時、共に戦っていたリナリーの声が、薄らと聞こえていた。





思い出せば思い出すほど、逆に疑問は増えていった。





リナリーは何をされた?

傍にいたティムキャンピーは?

_____別行動してたレイは?





それに、



「キミはさっき、チケットを買いに来た……!?

キミが"ロード”……………?」





休憩してたアレンとリナリーの前に現れ、チケットはどこかと尋ねてきた少女。

姿は、そこらの女の子と変わりはないというのに…………





「どうしてアクマと一緒にいる…………?」





彼女自身もアクマであれば、こんなにモヤモヤとはしない。

だが、彼女からはアクマの魂は見えない。





つまり、彼女はれっきとした人間だ。





「アクマじゃない…………。
キミは何なんだ?」










「僕は人間だよぉ。」





愉快そうに微笑んだ少女___ロードは、嘲るようにまた口角を吊り上げた。





「何その顔?」




















「人間がアクマと仲良しじゃいけないぃ?」





リナリーから離れて、こちらへ向かい合ったロードが、当然のことのように言った。





「アクマは……人間を殺すために伯爵が造った兵器だ……。

人間を狙ってるんだよ……?」





まだ、ロードはアクマに騙されてるだけの少女だと思ってるらしい。

銀灰の瞳を真っ直ぐにロードへ向け、弁明するアレン。



だが、彼女は"普通の人間”ではなかった。





「兵器は人間が人間を殺すためにあるものでしょ?」





ロードは笑みを崩さず、黒曜たる眼差しを向ける。

これが、ロードの持論だった。










殺戮兵器は元来、人間どうしの争いによって生み出され、

使われ、

やがて怨まれながらも歴史に刻まれてきた。





アクマは、ボディの骨組みだけでは成り立たないことは、アレンもよく知っていた。





1度、養父をアクマにした人間だから_______________





人間の執着、悲しみ、絶望、無念、渇望、涙、悲鳴、怨念……。





悲劇の始まりを、愚かな人間は自ら願い、その渾身の叫びを、冥界に轟かす。





アクマは、すべて人間が生み出したものなのだ。















「___千年公は僕の兄弟。

僕たちは選ばれた人間なの」





アレンに近付き、その正体を表していくロード。

ズズ……と音がして、ロードの白かった肌はだんだん黒くなっていった。





「何も知らないんだね、エクソシストぉ

お前らは偽りの神に選ばれた人間なんだよ」





額に現れた、十字の模様。










「僕たちこそ神に選ばれた本当の神徒なのさ



_______僕たちノアの一族がね」







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