泣き虫DAYs
□7
4ページ/4ページ
「あっ、ねーーーそこのカボチャァ」
すると、2人が休憩していた路地に、少女が入ってきた。
「<カボチャと魔女>のチケット、どこで買えばいーのぉー?」
これは大事なお客様だ。
すぐさま営業スタイルに切り替わると、アレンはイキイキと案内した。
「いらっしゃいませー♪
チケットはこちらでーす♪」
「んー」
傘とキャンディを持った、ショートヘアーの子が、アレンに促されるまま表通りに向かう。
「じゃ!リナリー後半がんばってきます!」
しゅぱっと敬礼をしたアレン。
「がんばって」
苦笑いを零したリナリーに、もうさっきの暗い顔は無くなっていた。
「何だと!?」
表の店先で、何やら騒動があった。
「うーん、これで良いかな。」
その頃、レイは、人手が不足しているという土木事業の人事に話をつけ終わったところだった。
普通に考えれば、ミランダの仕事として土木はどうかと思うものだが、いつかアレンが思ったように、レイは変なところで抜けていた。
念を押すようだが、レイの行動に悪気はない。
「でも呼び込みの仕事のが給料いいしなぁ。
できればソッチの方が良いのかな」
ゆっくり下り坂をおりて、アレンとミランダが今働いている職場まで向かっていたとき。
ひとりの男が、坂を上ってきて、レイの隣をすれ違った。
「……今 劇場 行カナイ」
「!」
たどたどしい言葉。
レイは、こいつがアクマだとすぐさま気付いた。
しかし、容易に発動が出来なかった。
彼は、レイがエクソシストであり、劇場に向かうのも知っていて、攻撃を仕掛けるどころか忠告のようなものまでして来たのだ。
こんな話は聞いたこともない。
詳しく話を聞こうと、振り返った時。
もう男は居なくなっていた。
「……は、アクマがエクソシストの心配?
………………熱でもあるのかな。」
むしろ自分の不調のせいかもしれぬと額に手を当てた。
全くの平熱である。
様子のおかしかったアクマも、無視は出来ない。
何かしらの事件でも起きたか、と思ったら、遠くで人の叫び声が聞こえた。
「……______っ!!」
アクマの言葉が気にかかりつつも、その足は声の聞こえた方角へと向かっていった。
スリを追いかける2人の姿を見た、という目撃情報を街の人から聞いて、きっとアレンたちのことだと思った。
しかも、スられたお金は仕事の売上金という勘まで働く。
3人が入ったという路地を指さす女性の最後の言葉まで待たず、レイはグローヴを発動させ音速で追いかけた。
(くっそ、大事な時に……っ!)
街の怪奇を止めるため、必死こいてやってるんじゃこっちも!
レイは相当頭にきたようだ。
むっすぅぅぅとしかめっ面しつつ、細い道を移動してると、ゴーレムに連絡が入る。
この時、彼女はこれがアクマの仕業だと知らず、この無線にてようやく自身の愚かさを思い知った。
<___レイっ!
急いで劇場に戻ってください!>
ゴーレムの先はアレンのようだ。
切羽詰まったその声に、考えるより先レイは空へグローヴを伸ばし、指示通り劇場へUターンした。
「絶賛逆戻り中だっつの_____っ!」
<僕ら売り上げ金盗まれて、捕まえた犯人がアクマで、罠に嵌められて、ミランダが危機で………
うわっ!……_______ザザッ>
アクマと対戦中か、途中で切られた無線。
アレンの言いたいことは粗方分かったけど、彼には後で要件の上手いまとめ方というものを指導せねば。
レイちゃんが物分かりよくて良かったね、と自分で言って平常心を心がける辺り、余程私は焦ってるらしい。
珍しく余裕を無くしたレイは、屋根から屋根へと劇場までの道をかっ飛ばしていた。
.