泣き虫DAYs
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あの女の子が、何だったのかはまだ分からない。
でも、千年公と何らかの関わりがあるのは確かだ。
本来なら、そういう人間は捕らえて話を聞くスタンスだったけれど、なぜかレイはそれができなかった。
(……、女の子のことは後だ)
今は、このアクマを倒すこと優先。
風を使うアクマと向かい合い、両手をかざす。
しかしアクマは不満そうに言った。
「なんだよ、ノリ悪ィなあ。
……"風”で勝負しようゼ」
相手のプライドを傷つけたようだ。
勝負の仕方なんてどうでもよかったけれど、つい先日、スーマンから空気を操って使う風の技を教えられていた。
<浄天ノ紐>だけでは、攻撃の幅が狭くて悩んでいたところだったので、この機会はチャンスか、と思える。
後ろのアレンを気にかけつつ、レイの心は久しいほどに高揚していた。
「……いいよ。勝負しようか。」
第三形態、呟くと、それに呼応するようにグローヴが光って、指先が出ていたタイプから通常の手套のようになった。
色も、艶光りする濡れ羽色である。
「うわお。想像以上!」
風を使うタイプだからか、前のより軽い感覚だ。
目をちょっと見開いてから、にっと笑った。
「いくゼ……_威風・キリキザミ_!」
アクマが、さっきより強い波動を持った竜巻を起こして攻めてくる。
風に白波が立つような、大きな威力を宿してるようだ。
「うーん、技名考えてないや……
こんなのはどう?
___風花!」
見えない何かが、アクマの体を包むように取り囲んだ。
「!?」
その間に、迫り来る竜巻を己の空気で遮断し、安全をとるレイ。
「風使いの利点って、なんだと思う?」
見えないけれど、アクマの周りには間違いなく鋭さを孕んだ風が存在する。
「ぁ……アァァア……見えねェ……見えねェ!」
___シュゥ……………ゥウ___
呑み込まれて破壊されたアクマは、きっとまだレベル2に成り立てだったのだろう。
"風”の上手い使い方を知らない。
「"見えない”ところなんだよね。」
スーマンの教えは、レイのイノセンスにも適用できたらしい。
散っていったアクマを少し見つめたあと、すぐにアレンのもとへ加勢した。
「……なに、この状況。」
「さあ………………」
じゃーんけーんポン!
あーいこーでポン!
なぜか、殺し方について揉める2体のアクマ。
しかもジャンケンとか……緊張感が無さすぎである。
アレンも呆れてるようだった。
ドドドドド_ッ!
「ギャーーー!」
見兼ねて攻撃をしかけるアレンに、ブチ切れたアクマたちは、
「エクソシストブッ殺す!!」
と、ようやく戦闘に戻った。
だが。
__待て__
「「…………っ!?」」
動きが止まったアクマたち。
驚くふたりをよそに、2体はまだシーンと停止した。
__楽しそーだねェ__
__お前らぁ イノセンス回収のこと忘れてねぇ〜?__
__戻れ__
次の瞬間、2体は天高く飛び上がり、そのまま居なくなってしまった。
「………………、何なんだ…………?」
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