泣き虫DAYs
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「うーん……。結構汚いな」
黒の教団壊滅未遂事件が起きて、アレンは部屋を変えなければならなかった。
コムリンによって自室が全壊、空いているのは倉庫しかなく、埃っぽい部屋に段ボールを運んで来たときのセリフが冒頭である。
しかし不幸中の幸い、この部屋は食堂の隣なので、大食漢であるアレンにとって都合が良かった。
「……よし、荷物運びは終了っと」
もともと身の回りの物は少なかったし、前の部屋も与えられたばかりで私物もろくに揃ってなかった為、それはあっという間に終わった。
グキュルルルルル……
「…………。」
「あらんッ!?アレンちゃんじゃなぁいの!」
「はは……小腹が空いちゃって。」
昼食まであいた時間、荷運びに体力を費やして、未だグルグルと音を鳴らす腹が、何かちょっとした物を望んでいる。
でも、アレンの場合、<小腹>だとか<ちょっとした>のイメージが並とは違うので、朝食を最後に摂った団員の後、暇を持て余していたジェリーたちはここぞとばかりに腕を振るう。
「いいわん!丁度手持ち無沙汰だったのv」
「それなら、存分に頼めますね!
じゃあ……
魚介類パスタとチーズグラタン、ミネストローネにエビチリに餃子10皿にワンタン麺にあとデザートでチョコレートパフェとフルーツポンチください!
全部量は多めで」
「OK!腕によりをかけて作るから、ちょっと待っててねん〜v」
最初の注文で、アレンの胃袋事情は大体わかったのか、困惑だとか混乱することもなくスムーズに了承する料理長。
だがここで忘れないで欲しいのが、これらはあくまで<ちょっとした><小腹を満たすもの>であって、彼の本領を発揮すればこれでは済まないということ……___
人も疎らになった食堂にて、プレートに積まれる食事を心待ちにしながら微笑んだ。
(朝はへブラスカの所にイノセンス届けにいって、すぐ部屋を移動したから、朝食といえばピザ5枚しか食べれなかったんだった……)
ふと思い返したあと、漂ってくる美味しそうな匂いに顔を綻ばせていると。
「あっ、アレン!!」
「?…………ジョニー、」
どうやら、人を探しているらしく、キョロキョロと食堂を見回しつつ、こちらに歩いてきた。
「任務だってさ。食べたらでいいから、室長室に行ってね!」
「!わかりました。」
食事のひととき、ゆっくり過ごそうかと考えていたが、任務ならば仕方がない。
すぐ済ませようと、準備の出来たプレートを席まで持っていった時、
「ああ、そうそう!レイ見なかった?」
「え……。医療室じゃないんですか?」
レイといえば、例の怪我を静養中だった筈だが、ジョニーによればもう外出許可が下りたらしい。
レイも、アレンと同じ任務に就くようで、見かけたら声を掛けてほしい、と頼まれた。
「じゃあ、よろしく!オレこれから調査する資料あるから頼んじゃうけど……」
「大丈夫です。任せてください!」
グッ、と親指を立てて見せれば、「ありがとーアレン!」と手を振り去っていくジョニー。
「レイさん……どこかな。」
大丈夫だと言ったからには、ちゃんとレイと合流しなければ。
探す時間も考えた上で、アレンは頼んだ8品をあっという間に平らげ、まずは彼女の気心も知れてるだろうリナリーに聞くことにした。
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