泣き虫DAYs
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(きっと彼らも、分かってない)
先程の人間たちも、きっと。
だがそのままでいい。
何も分からないまま、安全な場所で、今の平穏を保っていれば。
例え、私がナンとかナンとかナンが、買えなかったとしても、
しがらみも案外、悪くない事だってある。
用意されていた籠のなか、数ある赤林檎の狭間に隠されていた、ひとつだけの青林檎。
それを手に取って、動き始める馬車から見えた景色を
がじりと齧りながら眺めていた。
「それに、平和を守るヒーローって
カッコイイでしょう。」
カチャリと鳴らされた
せ
つ
な
______パァン………ッ______
一つの銃声が鳴り響き、一つの体が宙を舞う。
その途端、馬車は動きを止め、
倒れ込む男。
重々しい音が辺りに反響するなか、
怖がった馬たちが目を剥いて
インドの地を照らす太陽が、ギラギラと白昼の夢を見つめていた。
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