だからどうした

□21 変態っぽい
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きつい入り口を押し入ると熱い内壁が俺の指を押し戻してくる。その力に抵抗して小刻みに抜き差ししながら奥へ奥へと指を進める。そうして第二関節まで差し込んだところでいろんな心配事が浮かんできた。

あの時は何をどうすればいいのかわからないとは言ったけど、ただ指をくわえてこの時を待っていたというわけじゃない。調べられることはきちんと調べておいた。

でも実際に指を入れてみて、穴の狭さを実感して。指より太いものがここに入るのか、入ったとして少しでも苦痛を和らげることが俺にできるのか、智樹さんはああ言ってくれたけどやっぱりいやな思いをさせてしまうんじゃないか、とか。考え出したら止まらない。


「……、く、っ」


悶々していると智樹さんが苦しそうな声を漏らして腰をくねらせた。


「大丈夫?」

「んっ、だいじょうぶ」


相変わらずの苦しそうな声で、智樹さんは返事した。明らかに無理をしているような声色だったけど今はその言葉を信用して指を根元まで捻じ込む。


「指、全部入ったよ。なか熱いね」

「そ、んなこと、いちいち言わなくていい……っ」

「言うよ。だって言葉攻めしてるみたいで興奮するし、智樹さんのそうやっていちいち恥ずかしがる姿、たまらなく好きだから」

「っ吉井君、それ、ちょっと変態っぽい」

「ぽい、じゃなくて本当に変態なんだよ俺。知らなかった? だけどそんな俺でももっと好きになってくれるんでしょ?」


少しでも気が紛れるなら。と、からかうように言いながら一物を扱く。溢れ出る先走り汁を巻き込めば、くちゅくちゅ、と卑猥な水音が響いた。

後孔に入れていた人差し指を腹側に押し付けながらゆっくり引き抜いていく。すると指先に何か固いものが当たった。瞬間、後孔がきゅっと締まり、手の中の一物が一際大きく脈を打つ。


「んぅっ、いま、の、なに……っ?」

「前立腺って聞いたことない? ここがそうだよ」


返事しながら指の腹で前立腺を押し上げる。智樹さんは今まで感じたことのない未知の感覚に戸惑っているのか逃げるように腰を揺らした。


「どんな感じ?」

「なんか、変、っ……熱い」

「痛くはない?」

「なっ、い」

「じゃあ指増やすけど、大丈夫?」

「っ、ん、たぶん」


返事が心許ないけどこればっかりは仕方ない。こんな事をされるのは生れてはじめてだろうから。だからせめて痛くないように、智樹さんの反応を一つも逃さないように、慎重に中指を参戦させる。

すでに人差し指が入っているおかげか、中指は案外すんなりと受け入れられた。

智樹さんの方にも特に変わった様子は見られない。だけどそれはつまり苦しさも変わらないということで。


「く、……っふ、ぅ」


智樹さんの口から苦痛を含む声が漏れるたびに手が止まりそうになる。でも智樹さんがやめると言わない限りこの手を止めるつもりはない。

一物を扱く手を早めたり適当な会話を交わすことで気を紛らわせながら、指を抜き差しして後孔をしっかり解していく。そうしてるうちにだんだんと苦痛を含む声は少なくなってきた。でもまだ油断はできない。

なのに智樹さんが。


「よ、しぃくん、……たぶん、もう、大丈夫だから」


と、言ったりするから。加えて俺の我慢も限界ぎりぎりで。まだ少し不安は残るけど先へ進むために指を引き抜いた。


「っ、ぁ……はぁ」


指二本分、ぽっかりと開いた後孔が物寂しそうにひくついている。その様を見ていると、生唾が大きな音を立てて喉を通り過ぎた。

智樹さんの荒い呼吸音を耳にしながら緊張して震える手でベルトを緩めてズボンの前を寛げ、パンツから取り出した一物を後孔にあてがって先端をこすりつける。そして狙いを定め、ぐっと押し込めると指を入れた時とは比べ物にならない声が智樹さんの口から飛び出した。


「い゙っ、ぁ……ッ!」

「智樹さん、大丈夫?」


返事をする余裕もないのか、智樹さんが声を出さずにこくりと頷く。

全然大丈夫じゃないんだろうけど中途半端なところで止めるともっと苦しいかもしれないと思い、ゆっくりでも確実に押し込んでいく。その間、智樹さんは俺に心配をかけまいとしているのか声を出さないように歯を食いしばり、目を固く閉じていた。

痛いならそう言えばいいのに、それをこんな風に我慢してまで俺を受け入れようとしてくれている姿が途轍もなく愛しくて。


「……ごめんね、智樹さん、ちょっと我慢して」

「え、……うっ、あ゙ぁッ」


少し強引に腰を進めると覆いかぶさるようにして智樹さんの唇に噛み付いた。刺激に耐えられず開いた歯の隙間に舌を捻じ込み、奥に引っ込んだ舌を絡めとって軽く吸い付く。


「ふぅ、ん……智樹さん、智樹さん……ッ」

「ん、ふっ、ぅ」


合間に何度も名前を呼びながら深く口づけを交わす。しばらく咥内を味わい、息が苦しくなったところで唇から離れればあんなに強張っていた顔がとろとろに蕩けていた。

どうやら苦痛は少し和らいだようだ。でもまだ半分ほど残ってる。

引き続き智樹さんの様子を窺いながら腰を進めていく。そうしてやっと肌と肌がぶつかり合った。


「智樹さん、全部入ったよ」

「ぁ、ほん、と……?」

「こんな時に嘘なんか言わないよ」

「だって、自分じゃ、よくわからな、いっ、から」

「じゃあ確かめてみる?」


問いかけながらも返事は待たずに、智樹さんの手を攫って結合部に誘導する。しかしそこに指先が触れた瞬間に智樹さんは素早く手を引いてしまった。

自分じゃわからないって言うからわからせてあげようと思ったのに。


「そういう変態っぽいの、やめてほし、ぃ」

「だから、ぽい、じゃなくて本物なんだってば。……そんなことより、動いていい? ゆっくりするから」


今度は頷いたのをちゃんと確認してから膝裏をつかんだ手で脚を左右に開かせ宣言通りに腰をゆっくり前後させる。そうやって緩く動いているせいか中の感覚が鮮明に伝わってきて、あまりの気持ちよさに背筋が震える。

ピストンに合わせてピクリと震えるなまめかしい体を見下ろしながら思わず舌なめずりをすると智樹さんと目が合い、途端に一物を締め付ける力が強くなった。


「ッ、智樹さん、ちょっと力抜いて」

「じゃ、見るのっ、やめて……っ」

「それは無理、かも」


瞬きの間でさえも惜しいくらいなのに。

「じゃあ力は抜かなくていいよ」と俺が見るのをやめなかったせいか、智樹さんは自分の腕で顔を隠してしまった。いやしかしこんなことをされると余計に顔が見たくなる。だから俺は智樹さんの手を掴んでそれをベッドに縫い付けた。

そうしてまた目が合い、智樹さんが眉をひそめてそっぽを向く。


「もぉ、いや、だ……、ほんと……に、恥ずかし、っから、ぁ」


首元まで真っ赤にして、目尻に涙を滲ませて、智樹さんが言う。少し意地悪が過ぎたかと反省をした時間は、恥ずかしがる智樹さんの姿に情欲を煽られたせいで一秒にも満たなかった。

それどころかもっと意地悪をしてみたくなったので掴んだままの手を引き、智樹さんの一物を一緒に握りこんでみた。

すると智樹さんがさっきと同じように手を引こうとしたから、逃がさないよう手に力を入れた。その刺激に智樹さんの腰が跳ねる。


「んッ、……あぁっ」

「ごめんね。でも智樹さんの恥ずかしがる姿、もっと見たい」

「〜っ、ばか、変態! ……もう、好きにして、いぃッ、から、ぁ、何も言う、な」


やけ気味なお許しが出たところで一物を一緒に扱き始める。はじめは抵抗していた智樹さんの手も暫くすると抵抗をやめてくれた。むしろ自発的に動くようになり、その動きはだんだん早くなってくる。


「智樹さん、イキそうなの?」

「っ、ん」

「じゃあ、こっち向いて。智樹さんのイキ顔、俺に見せて」

「だから、そういう……、ッ!」


こっちを向く気がなさそうだったから扱く手を止めれば、智樹さんは我慢ならなそうに腰を浮かせて首をのけぞらせた。


「はっ、ぁ、……わかっ、た、そっち向く! 向くから、手ぇ、止めない、でっ」


切羽詰まった声で懇願するからすぐさま手を動かすと、徐にこっちを向いた智樹さんが強請るような眼で俺を射抜く。


「っ、いいよ、そのままイって」

「はぁ、んあっ、……っ、ぁッ!」


腰を止めて何度か扱いてあげると、智樹さんは短く叫んで腰を一際大きく跳ねあげ、一物を大きく震わせながら精液を自らの腹に吐き出していく。その間、智樹さんはずっと俺の目を見詰めていた。

その気怠そうな目が途轍もなく妖艶で。

ゾクゾクとした興奮が背筋を撫であげ、一物が大きく脈を打つ。その感覚が伝わったのか口に小さな笑みを浮かべた智樹さんが息も絶え絶えに声を絞り出す。


「はぁ……、よしい、くん、も……」


言いながら俺に向かって腕を広げてくれたから、お言葉に甘えてそこに飛び込み律動を再開する。

ただでさえ限界ギリギリだったというのに加えて背中に回された手の感触に追い打ちをかけられ、少し動かしただけで精液が上がってきた。寸でのところで一物を抜いて、智樹さんの腹に精液をぶちまける。

倦怠感に襲われる体を隣に横たわらせるとこっちを向いた智樹さんが少し目を泳がせた後、俺の目を見詰めて気恥ずかしそうに微笑んだ。
 
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