肉食兎ちゃんの捕食活動
□クールな熊さん
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大学図書館で本を読むふりしながら、受付カウンターに座って黙々と作業を進める男に目を向ける。
あの人は熊谷灰音(くまがいはいね)さん。ずれた眼鏡を上げる指先とか、溜まった息を吐くときに開く口とか、こげ茶色の髪をかき上げるしぐさとか、妙に色っぽくて目が離せない。
きっと本人は目の保養にされてることなんて微塵も気付いてないんだろうな。
その目の保養もそろそろ終わりだ。惜しく思いながら読みかけの本を手にカウンターへ向かう。
「灰音さん、これお願い」
声をかけて持っていた本を差し出せば、灰音さんはあたりをきょろきょろ見渡して人がいないことを確認すると俺をぎろりと睨んだ。
「名前で呼ぶなって言ってるだろ」
「いいじゃん。綺麗な名前なんだから呼ばせてよ」
カウンターに肘をつき、貸出作業を進める灰音さんにニコニコと笑顔を向ける。すると灰音さんは諦めたように溜息を吐いて「他に人がいないところでだけだぞ」と条件を付けながら俺に本を戻した。
「やった。ありがと」
「もし破ったら二度と口きかないからな」
「はーい、気を付けまーす」
こうして目の保養は終わり、俺は上機嫌で講義へ向かった。