肉食兎ちゃんの捕食活動
□チンピラの狼さん
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大学二年生の清々しい秋晴れの日のこと。
この世に生を受けて二十年と三ヶ月余り、この歳になって初めて俺は、恐喝被害にあった。というかあっている。
路地裏の壁に追いやられ、俺よりも体格がよくて顔も怖い三人の男が見事に逃げ道をふさぐ。始まりは数分前。道を歩いていたら肩をぶつけられ、骨が折れちまった治療費よこせという古典的で典型的なやり口から逃げて追いかけられて、今に至る。
あの時俺は確かに避けたはずだ。それなのにこの男が故意にぶつかってくるから、なんて反論してもこれがこいつらのやり口なんだから意味はない。
さて、どうしたものか。……どうしてやろうか。
冷静でいられるうちに打開策を考えようとすれば、そこに第三者の声が耳に届いた。
「お前ら、ガキ相手にカツアゲなんかしてんじゃねぇよ、みっともない」
男たちの後ろから現れたのは、切れ長の鋭い目をした若い男だった。とは言っても確実に俺よりかは年上だけど。その男が銀色の髪を揺らして俺たちの間に割って入ってくる。
そして恐喝男たちのケツを蹴り飛ばして俺を助けてくれた。
もちろんカツアゲ男たちも黙ってやられるわけがない。すぐさま体勢を整えて戦闘態勢に入る。だけどうち一人が顔を真っ青にして早く逃げようと残りの二人を説得し始めた。でもやっぱりやられっぱなしは気に食わないのか、説得を無視して男に食って掛かる。
「どうなっても知らねぇからな」と顔を真っ青にした男が薄情にも逃げていく。その数分後、二人は互いの体をかばいあって、先に逃げた一人を追いかけていった。
「ちっ、よえーくせにケンカ売ってんじゃねぇよクズが」
苛立たしそうに呟いた男は懐から煙草を取り出してそれに火をつけた。
「あの……、ありがとうございました」
「ああ、まだいたのか。このへんガラの悪いやつが多いから気をつけろよ」
男はそうやって俺に忠告すると、足早に路地裏を去っていった。こうして俺の初体験は無事に幕を下ろしたのであった。