凪に吹きすさべ

□02 それは時化となるか
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倉敷先生は正座のまま姿勢を崩さず、俺のシャツを鼻に押し当て、息を荒げて一物を上下に扱いてる。

どうしてこんなことになってしまったのか。あんなことを言い出した数分前の自分に問い質してもたぶん答えは返ってこない。


「はぁ、っ……はっ、ふぅ、っく」


俺のシャツはあんな風に使われていたのか。やっぱりもう着たくねぇな、っていうか触りたくもねぇな。いっそ倉敷先生にあげようかな、有効活用してくれそうだし。でも母さんにはなんて説明しよう。破れたから捨てた、と言ったところで信じてくれるかどうか。

そんなことを考えながら、すっかり理性をなくしてオナニーに耽る倉敷先生の観察を続ける。

最初は遠慮がちだった手は扱いてるうちに激しさを増し、先走り汁を巻き込んで耳障りな音を立てている。だらしなく開いたままの口から垂れる涎がシャツの色を変えていく。

うん、やっぱりシャツは倉敷先生にプレゼントしよう。


「ん、ふぅ、……はぁっ」

「体育の時間、飯賭けてバスケしたからいつもより汗かいちゃったんだけど、臭くない?」

「っ、ない、です」

「そ、よかった」


いや、倉敷先生にとっては臭い方がよかったんじゃ、と思ったけどその汗の匂いが好きなら臭いとは言わないよな。むしろいい匂いだとか思ってそう。

あーあ、倉敷先生が高校生の汗臭いシャツに発情する変態だとは思わなかったな。人それぞれ癖はあるけど、これはちょっと……いや、かなり引く。

派手目な俺たちを対等に扱ってくれるし、優しいし、物腰は柔らかいし、厳しいところもあるけど冗談は通じるし、肝心の授業もわかりやすいから教師の中で一二を争うほどには好きだったのに。

組んだ膝に肘を載せて頬杖を突き冷めた目で見下ろせば、倉敷先生はその視線から逃れるように俯いた。


「おい、俯いてんじゃねぇよ」

「っ、すみま、せ……んっ」


戻ってきた倉敷先生の目に浮かぶ涙は恐怖か後悔か、はたまた欲情か。

思わずそこに向かって手を伸ばせば、俺の手に驚いた倉敷先生が肩を跳ねさせて、全身をびくつかせながら、ふーっふーっ、と荒い息を吐いた。

まだ触れてもいないのにこの感度。実際に触れたら倉敷先生はどうなってしまうのか。好奇心でさらに手を伸ばせば倉敷先生はぎゅっと目を閉じた。瞬間、スマホが震えたから俺の手は行き先をポケットへ変えた。

恐る恐る目を開けた倉敷先生が離れていく俺の手を見て泣きそうな顔を浮かべる。

かまわず取り出したスマホの画面に表示される渡辺の名前に、すっかり忘れてた二人のことを思い出す。でもどうしよう。今はゲーセンより倉敷先生で遊びたい。

スマホ越しに倉敷先生を見遣ると、俺の考えていることがわかったのか、それだけはやめてください、と言いたそうに首を横に振った。


「……、静かに続きしてろ」


願いを受け入れる義理など俺にはない。

「わかった?」と念を押すと諦めて動き出した倉敷先生の手を確認して、通話を開始した。
 
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