凪に吹きすさべ
□02 それは時化となるか
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やっと学校が終わって、部活に入ってない暇人同士でこれからゲーセンに行こうかと道を歩いていた時。
やけに胸元が涼しいなぁ、と視線を落とせば。
「あ、やべ、シャツ忘れてきた」
六限目の体育が終わって暑かったから中に着ていたシャツを脱いだことを思い出した。そのシャツを机に置きっぱなしだったことも思い出した。
取りに戻るのは面倒くさい。でも家に帰って母さんにうるさく言われるのはもっと面倒くさい。
その体育で着ていたジャージはしっかり持ってるのになぜたった一枚のシャツを忘れてしまったのか。
こんな道端で嘆いてもしょうがない。戻るか。
「わりぃ、シャツ取りに戻るわ」
「おう、先に行ってるからな」
渡辺と高橋と別れて、少し速足で来た道を戻る。
余計な労力を増やしちまった。
机の上に置いてたのになんで忘れてくるかな、っていうかさっさと鞄に突っ込んでおけばこんなことにはならなかったのに、と自分のうっかりを呪いながら、十数分前に跨いだ校門をまた跨いだ。
グラウンドのほうから聞こえてくる元気な部活の声に、朝夕は涼しくなったけど日差しがあるうちはまだまだ暑いのによくやるなぁ、なんて関心を抱きながら正面玄関へ向かった。
生徒が正面玄関から入るのは禁止されてるけど非常事態だから許して。
誰に言い訳するでもなく許しを請いながら、来客用のスリッパを拝借して教室へ歩き出した。
ぺった、ぺった、とうるさいスリッパの音が静かな廊下に響く。
いやしかしさっきまで暑かったはずなのに汗が引いて屋内に入ると寒いな。
本格的な秋を感じると、くしゃみが爆発した。
早くシャツを回収して寒さを和らげよう。
鼻をすすりながら教室のドアを開けて自分の席に目を向ける。でもそこには何もなかった。
「……」
おかしいな。
もしかしてと思って机の中を覗いてみたけどすっからかん。ここまで来て実は鞄の中に入れてましたってオチかと思って鞄を覗くも勉強道具と菓子以外には何も入っていなかった。
おかしいな。
母さんが適当に買ってきた変な柄のシャツを間違って持って帰る人がいるとは思えないし。
他に忘れてくるような場所ってあったっけ、とあたりを見渡す。
教室の後ろにある各々の収納ロッカーが目に入ったけど、そもそもそこに入れた記憶はない。
しかし他に心当たりもないので自分のロッカーを開けてみた。でもやっぱり見当たらない。
おかしいな。
頭を捻っていると微かな物音を耳が拾った。耳を澄ませて音の元を探ればそれはどうやら掃除用具が入っているロッカーから発せられているようだ。
とりあえず今はシャツを忘れて、物音の原因を探るためにロッカーを開けた。
すると俺のシャツを握りしめて下半身を露出させた倉敷先生がいた。