べっどるーむ


□神の力
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何時間も電車に揺られ、やっと着いた新しい我が家。
管理人に鍵を貰い、自分の家の扉を開ける。
中はとても綺麗で白い壁も新品同様。
柔らかいフローリングは、長時間の旅を癒すような感覚になる。
そして目の前には沢山のダンボール箱が積まれていた。
私はその光景に溜め息をつくと、近くのダンボールに腰掛ける。
中には私物がパンパンに入っているダンボールは私の体重を支え、崩れる気配は無かった。


それにしても、こんな大量なダンボール。一人じゃ大変でやる気も出ない。
時間も中々良い時間でどうしても動く気にならなかった。


仕方ない、とダンボール箱から立ち上がり作業に取り掛かる。






結局終わったのが2時間後だった。
ふぅ、と汗を拭うふりをする。
広かった周りは私物だらけになり、少し狭まったがそれでも人1人住む分には広い方であった。
玄関前には畳まれたダンボール箱が沢山。
ダンボール箱を今から捨てるにもまた時間がかかりそうだ。


なんて考えていると、ピンポーン。とチャイムの鳴る音がした。



こんな時間に誰だろう?
そう思いカチャリと扉を開ける。
目の前には見知らぬ男の姿があった。

「あ、夜遅くにすいませんー。えっと、新しく越して来た人だよね?」

好青年のような笑顔をみせる男。
マンションの住人だろうか。もしかするとお隣さん?

「はい、そうですが。」

「僕、隣のしんぺい神っていいます。」

しんぺい神と名乗る男は右手を私に差し出した。
握手だとわかった私はすぐ手をのばし、しんぺい神と握手する。

「あ、すいませんわざわざそちらから来てくださって。ええと、私は」

「NamEさんですよね?」

え?

自己紹介をしようとしたらしんぺい神が私の名前を先に言った。
まだ会ったばかりの彼が私の名前を知っていることに驚きを隠せなかった。
そんな私と裏腹に、しんぺい神は笑顔のまま左手を私の目の前に出す。







「NamEさん。貴方の性別を変えにきました。」











そう言ってしんぺい神は左手の指を鳴らすと、私の視界が一瞬揺れた。



倒れそうになるのを耐えて、訳のわからない言葉を発したしんぺい神を見る。



心なしか、彼へ向ける視線が近くなった気がした。


「思ったとおりだ。イイ男になったね。」

にっこりとしんぺい神は笑う姿に嫌な予感がした。

急いで洗面所に駆け込み、鏡を凝視する。

「え、誰…?」


鏡には、見知らぬ男の姿があった。
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