瑞受けの部屋

□慣れて慣らされる(R-18)
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 軋むスプリングの音と、不規則で荒っぽい呼吸。常夜灯しか点けていない薄暗い室内で聞こえるのはそれだけだった。
 いつの間にか自分よりやや小柄に見えるようになってしまった相手を組み敷いた状態で吉貞はゆるゆると腰を動かす。顔を横に向けたままこちらを見てくれないものだから、みずがき先輩、とちょっと甘えるみたいに呼んでみた。ちらりと覗いた横目は、けれどすぐに目蓋に閉ざされてしまう。唇も限界いっぱいに噛み締めて、痛くないんだろうか。
 脚をぐいと抱えて口づければ、やっぱり金臭い味がするから猫みたいにぺろぺろ舌を這わせて舐め取った。そうしているうちに解けた口内への侵入を許され、性急に丁寧に中を貪っていると奥に沈めた中心への締め付けが強くなり、くぐもった呻きが漏らされる。微かにこぼされるそれだけで脳みそがくらりと揺さぶられるんだから、声を聞けたら、熱に緩んだ眼差しを見られたら、どうなっちゃうんだろう、おれ。
 見たい、聞きたい。
 胸に渦巻くもどかしさがキスの激しさに拍車を掛けた。苦しいのか瑞垣が肩を掴んでくるが無視し、ただただ唇の感覚に没頭する。
 合意の上でのセックスのはずなのに、瑞垣がこちらを見ることも声を上げるところも吉貞は聞いたことがない。理由をしつこく追及してみたら『うるせぇ!』と耳や首まで真っ赤になった顔でグーパンされたのは記憶に新しい。
 照れ隠し、可愛かったなぁ。
 キスを中断し、流し込まれた唾液に咽せる瑞垣を見つめながら吉貞はにやけそうになる表情筋をコントロールできない。たぶん、慣れの問題だと思うのだ。初めは真っ暗じゃなきゃできなかったのに、今では常夜灯を点けさせてくれるし昼でもカーテンを閉めたらオッケーだし。
 いかに最中の声と光景に慣れてもらうか。
 口をこじ開けたりとか手荒な真似はあまり気が進まない。どうしたものかと浮つく思考を巡らせたそのときだった。
 ブーッ、と。
 この場にそぐわない振動音の元は瑞垣の携帯だった。枕元に放りだしてあったそれを身を乗り出してひっくり返せば、明るいディスプレイが目に痛い。
「ん……ぁ、よし、さだ」
 体勢を変えたせいで深くなった挿入に身体の下で瑞垣が息を詰める気配がした。
「山西さん、て誰?」
「電話……か」
「そうじゃけど、誰?」
 振動を続ける電話は放置したまま、耳元で繰り返すときゅうと中がひくついた。耳、弱いもんねと吉貞は一人笑んで中で自身を行き来させる。
「ね、瑞垣さん」
 おれに言えない相手なん?うわ、妬けるぅ。一旦動きを止めて言ってみれば、は、と声にならない吐息が漏れて早くしろと言わんばかりに自分から腰を揺らしてくるものだから相当切羽詰まっているのかもしれない。けれどここは堪えて焦らして、と思ったところで閃いてしまった。
「ただの上司やから……切れって、あ、ばかっ」
 制止を無視して携帯を取り上げた。通話ボタンを押して無理やり瑞垣の耳へと押し付ける。おれって天才かも。
 吉貞のことを恨めしそうに見上げながら、もしもし、と電話に出る声は掠れている割にしっかりしていた。
 なんだ、声、出るんじゃん。
 ほんとに妬けた。
 ぷちり、と外れかけた理性に抗えず腰を突き入れる。不自然に身体が跳ねて瑞垣は声を詰まらせた。それだけじゃ全然物足りなくてゆっくりゆっくり中を後退していけば、パニックの色が浮かぶ顔と名残惜しげに絡み付く内壁が堪らない。ちょっと、やばいなこれ。へらっと笑ってみせて、再び一突きして電話越しの声に耳をすませた。大丈夫か、と尋ねる山なんとかさんはどうやら瑞垣の異変に気がついたようだ。
「い、え……だいじょぶ、です……実はちょっと、腹が……っ!痛くて」
 苦しい言い訳に噴き出しそうになるのを必死で我慢した。お大事にな、と言い残した上司のなんとかさんが通話を切った瞬間、瑞垣が潤んだ瞳で睨み上げてくる。
「おまえなっ……っあぁ!」
 声を出すタイミングに合わせて先端で奥を抉れば飛び出す裏返った高い声が、腰にもろにきた。
「瑞垣さん、かわいい」
「ば、か、言ってんなっ……やっ、あ、あ!……あぁっ、よしさだっ!」
 一度出してしまうともう抑えられないのか次々とこぼれる喘ぎ声は吉貞が初めて聞くものだ。ふはっ、と笑った自分の声が気持ち悪い。
「そりゃ、こんなん、はいってたらお腹、痛くなっちゃいます、よね」
 がつがつと突き上げる激しさを逃がすみたいに頭上のシーツを握りしめ、瑞垣がぎゅっと目をつぶる。でもその直前に垣間見えた瞳が快楽に融けきって潤んでいたのは確かで。
 抽送を繰り返すたびに上がる声が思考回路を焼く。慣れない聴覚からの刺激のせいか、気が付くといつもじゃ考えられないくらいに呆気なく薄いゴム膜の中に吐精してしまった。達した脱力感で瑞垣の肩に頭を埋めていたら押し殺した笑い声が聞こえてくる。
「なんや、早漏やな」
 おれ、まだイってないんやけど。
 からかいを含んだ掠れ声に今度はこっちが真っ赤になる番だった。








唐突に降ってきた吉瑞でした。せっすす中に電話に出させてみたくなったのです……それがなぜかこんな展開にww瑞の色気に骨抜きにされるよしさだ〜!お互いどんどん開発し合ってえっちになればいいと思いますとか何言ってんだ私は。いつものごとく頭悪い感じですみません(^^;)

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