豪巧の部屋

□すいーとないと R-18
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夕食の後片付けも終わり、2人揃ってベッドの縁にもたれてテレビを見ているときだった。

豪、と呼ばれて横を向くと至近距離に迫った巧の顔。続いて唇に軽く温もりが触れた。

「…巧?」

普段、自分からこうした愛情表現をすることの少ない巧には珍しい。

唇が一瞬離れた隙に問いたげな響きを含ませ呟くが無視された。代わりに口の隙間から柔らかな感触が侵入してくる。

これだけ仕掛けられて、そのまま黙ってされるがままでいる豪ではない。腕と腰を掴んで巧の身体を引き寄せた。

甘い唇を貪るように味わう。

長い指が自分のTシャツをぎゅっと握りしめるのを感じる。

舌を絡めてたぐり寄せ、後退しようとするのを追いかけた。整った歯列をなぞり、上顎をくすぐるように舌先で撫でてやると鼻にかかった喘ぎが漏れるのが聞こえた。

感じやすい箇所は知っている。一から開発してきたのは他でもない豪だ。

手探りでテレビのリモコンを探し当て、電源を切る。

シャツの裾から手を入れ、素肌に触れようとしたところで手首を強く掴まれた。

「…なんじゃ?…嫌か?」

尋ねつつ、そのまま背後のベッドに腰掛ける。巧も後に続いて、豪の隣に腰を下ろした。2人分の体重にベッドのスプリングが軋む音が聞こえた。

…?

こうしてベッドに上がってきたということは、キスの続きをしても良い、という巧の意思表示なのだろう。

だが、どこかいつもと雰囲気が違う。

そんなことを思っていると、再び巧が顔を寄せてきた。ついばむようなキスをしながら、豪の服の裾に手をかける。あっという間にTシャツを脱がされていた。

「たく…わっ」

肩を押されてあっけなく後ろへ倒れ込む。

ちょっと意地悪そうな巧の顔が真上に見えた。

「たまには、おれにも好き勝手させろよ」

低い囁きと共に深く口づけられた。

乱暴と言ってもいいくらい性急な動きで口の中を掻き回される。思い切り舌を吸われ、正直苦しい。でも快感だった。巧のうなじに手を回し、さらに深く、と自分の方へ引き寄せた。

いつもと違うポジションに新鮮さを感じる。背中に直接触れるベッドの感触はなかなかに心地良い。自分を押さえつけているのが巧であれば尚更だ。

巧の片手が首筋、胸、腹部へと下りていき、服の上からでも判る強ばりに触れた。些細な刺激だったが、思わず息を詰める。

喉の奥で響く微かな笑い声が聞こえた。

「もう立ってるのかよ」
「…誰のせいと思うとるんじゃ」

余裕たっぷりな巧がちょっと憎らしくて、自分も相手のものに手を伸ばした。握りこんでやると顔を歪めて声を漏らした。

「お前もそんなに余裕ねぇじゃろう」
「…うるさい」

平手で手をはたき落とされた。着ていたシャツを無造作に脱ぎ捨て、再び覆い被さってくる。鎖骨の上の皮膚が薄い部分で、ちりっとした痛みが弾けた。かと思えば首筋を舐められ身体を震わせる。

いつの間にか下着の中にまで入り込んでいた手に直接触られ呻いた。

「濡れてる」

いちいち報告しなくてもいいのに、わざわざ口に出す巧はやっぱりすけべだと思う。

根元から先端へと動く指先に感じて、呼吸が乱れる。巧の腕を握りしめるが、すぐに振り払われた。

上半身から重みが消え、下着ごとズボンを脱がされる。

本当に好き勝手にするつもりらしい。

普段とは状況が正反対だ。

次は何をするつもりなのか。

その疑問の答えはすぐに出た。

直接湿った吐息がかかった次の瞬間。

すっかり立ち上がった自分のものに、巧の唇が押し当てられる。染み出した先走りを舐めとるように舌が這わされた。

「巧、やめ…っ…」

ぞくりとした感覚が、全身を走り抜ける。自分が巧にすることはあっても、巧にさせたことはなかった行為だ。

先端を咥えた口の中に、ずぶずぶと呑み込まれていく。熱く濡れた感触に、鋭く息を吸い込む。

小さく閉じた先端の穴を舌先でいじられ腰が浮いた。すぐに腰を掴まれシーツに押さえつけられる。

「じっとしてろよ、豪ちゃん」

喋る息にすら感じて、さらに固く熱くなる。

「たっ…くみ…ふざけん…な…よ…」

巧の口の動きがスピードを増した。自分の体液と巧の唾液、双方が混じり合わさった水音が快感を煽ってくる。

下半身に熱が集中する。

豪は巧の頭を掴んで引っ張った。しかし、巧は首を横に振って豪を離そうとしない。

「もう…出るっ…から…」

巧を引き離したいのに手に力が入らず、押さえつける手に抗うように腰も動いてしまう。

口の中に入りきらない根元の部分を指で扱かれ、舌と口蓋で挟まれ圧迫されてもう我慢の限界だった。

先にやり始めたお前が悪いんじゃからな。

熱に浮かされた頭に、ぼうっとそんな考えがよぎった。

巧の後頭部を押さえつけて、腰を思い切り突き上げると熱い感覚が先端からほとばしった。喉の奥まで突いてしまったらしく、巧はくぐもった呻き声を上げたが口を離すことはなかった。
荒い呼吸を繰り返しながら、巧の頭を掴んだ手から力を抜く。巧が体を起こした。喉元がこくりと動き、手の甲で口元を拭って小さく咳き込む。顔が軽くしかめられた。

「うわ…まず…」

本来女性器に注がれるものであるため、中の精子を女性器内の酸性条件から守るためにアルカリ性となっているので苦いのだ、という医学的解釈がこんなときでもすぐに浮かぶのは医学生の性か。でも口に出したらお互い萎えてしまうのは確実なため、豪は口を閉じたままでいた。

「お前、よくあんなの毎回呑んでられるな」
「巧のじゃからな」
「エロい。中年おやじかよ」

腹筋に力を入れて起き上がり、軽口を叩く巧の腰を掴んで引き寄せた。スウェットに手をかけ、下ろしていく。

「おい、今日はおれが…」
「けど、挿れる前に解さんとな?それはおれにやらせてもらう」

下着もスウェットも、まとめてベッドの下に放った。

「なんじゃ、お前も結構濡れとるじゃねぇか」
「だから言い方がエロいって…んっ…」

あぐらを掻いた膝の上に向かい合うように座らせて、今度は豪から口づける。苦味を帯びた唇を味わいながら、下へと手を伸ばす。

立ちかけているものを優しく握った手を上下に動かすと、巧の身体が強張るのを感じた。肩に置かれた手に力がこめられ、指が食い込み少し痛い。

もう片方の手で後ろを弄る。さすがに乾き閉じていた。

巧を抱えたまま、ベッド脇の小さなボックス棚に手を伸ばす。そちらを見なくても、ローションはすぐに見つかった。腰にかけるようにして中身を垂らすとびくりと巧が体を揺らす。唇を離して耳朶に歯を立て、舌で縁をなぞった。

前を緩慢な手の動きで撫でつつ、ローションに濡らした指先で後ろをまさぐる。

「…ん…あっ…」

唇を下ろしていき胸の突起を口に含むと、肩に置かれた指の食い込みが強くなった。ひょっとしたら痣になるかもしれない。

まずは1本だけ、指を中に押し込んだ。前回から日にちが空いていることもあり、まだ反応は固い。

胸と前の両方に舌と手で緩く刺激を加えながら、ゆっくりと解していく。

緊張が解けた頃合いを見計らって、2本目の指を挿入して中を開いた。

巧が引きつれたような喘ぎを漏らす。

「…ご…う……んっ…」
「力抜け」

呟くように言って、豪は引き締まった胸板から顔を上げた。代わりにうなじに唇を押し付ける。

それまでわざと触れないでいた、後ろの弱い部分をゆっくりと指の腹で撫でてやると、巧の脚がひくついた。

「…そこっ…やだって…うんっ…!」

撫でていた指の動きを、円を描いて押し込むような動きに変えた。耐えきれぬように巧が腰を揺らす。開いた口から喘ぎが漏れた。閉じた瞼に力が入りすぎていて、ぴくぴく震えているのが見えた。

前への刺激は一旦やめて、後ろだけに集中させる。空いた方の手を巧の腰に回した。

「う…あっ…んんんっ…」

堪えようとしても漏れる巧の声が、豪は好きだった。縋りつくように握りしめられた上腕の締め付けすら、心地良く感じる。

「…や…もぅ……ごうっ…!」

喘ぎ声の間隔が不規則になり、足先までぴんと張る。挿入した指が内部へと引き込まれ、離すまいとするようにぎゅっと締め付けられた。同時に前で白濁の液が放たれる。

反らされた喉元に口づけを繰り返していると、荒い呼吸をつきながら巧がくたりと肩に頭をもたせかけてきた。

「ほんと…おまえ…やだ……」

額を肩に埋めて巧が言う。まだ小刻みに身体が震えていた。指を引き抜くと、小さな呻き声が上がった。優しく背中をさすってやり、腰を掴んで抱え直す。

そのこめかみに口づけた。

「気持ちよさそうじゃったくせに」
「…だからやなんだよ。…疲れる」
「休むか?」

はぁ、と吐息が胸にかかりくすぐったい。

うん、と頷きが返ってくるかと思いきや、肩を押されて再び押し倒された。

巧はベッドに膝をつき、豪の腹部にまたがっているような恰好だ。

細めた目が豪を見下ろしている。

「まだそっちが欲求不満だろ。付き合ってやるよ」

胸の上を巧の長い指先が滑った。たったそれだけの刺激でぞくりと快感が湧き上がってくる自分も大概だ。ごくりと唾を飲み込む。

続いて自身の背後に手を回し、巧が豪の中心を掴んだ。巧を達させたときの興奮で立ち上がりかけていたそれが、巧の手の感触で決定的なものとなる。

片手で緩く豪のものをを扱きつつ、巧が腰を浮かせた。

身体の関係を2人が持ってからもう数年になるが、この体勢でやるのは初めてだった。

慣れぬ姿勢に角度がうまく合わないのか、豪のものはなかなか中へと入っていかない。じれったくなって腰を軽く突き上げると、巧が息を詰めた。どうやら外から感じるところを突いてしまったようだ。仕返しのようにぎゅっと握られ声を上げる。

「じっと…してろって…!」
「…すまん」

とっくにお互い身体は汗ばんでいる。姿勢を支えるために腹筋の上に置かれた巧の手が滑った。

「う…あっ!」

バランスを崩した拍子に腰が落ち、挿入口にあてがわれていた先端がずぶりと中へと侵入する。

熱い肉壁に取り囲まれる感触に、思考が痺れた。入り口から奥へとゆっくりとその中を滑らされるのは快感だ。

でも、足りない。

もっと、という意味をこめて腰を突き上げると巧は顔を歪めてこちらを見下ろした。腹の皮膚をつねられ、いてっ、と声を上げる。

「じっと、してろって」

歯を食いしばって巧が言う。震える両手を豪の腹筋について、身体を上下に揺らした。

ゆっくり、豪の反応を確かめるかのように。

焦らすような、というより完璧に焦らすための動きだ。

決定打のないまま加えられる快感はもはや苦しいだけだ。

「たく…みっ…もう…」
「まだ…だ…って」

すとん、と勢いよく腰を落として巧が高い声を上げる。根元まで熱い壁に包み込まれ、思わず唸った。

視線を下げると、巧のものの先端は我慢しきれなかった体液でじわじわと濡れてきているのが見てとれた。

限界が近いはずなのに、それ以上激しくは動こうとはしない。

今度は身体を浮かせることなく、豪の上で円を描くように腰を回し始めた。

新たな刺激に熱が高まった。思わずシーツを握りしめる。

「…あ、…ああっっ…うんっ…」

堪えきれない巧の声が、豪を煽る。

挿入した体内の奥がきゅうっと収縮するのを感じた。続いて豪の周りで。

思い切り締め付けられ、搾り取られるような強い感覚が襲ってきて目の前がちかちかする。

腹に白濁の液が降りかかるのが見え、もう我慢の限界だった。

腰を掴み、それまで抑えていた欲求を叩きつける。これ以上入らない、というほど深くまで自分を巧の中に押し込んだ。

豪の上で巧が掠れた悲鳴を上げ、揺さぶられる身体をのけ反らせた。どちらのものとも判らない汗の滴が散る。

巧の熱い体内で自分が脈打っているのが分かった。一度出したはずなのに、これでもかというほど出してしまう。

ぐったりと力の抜けた身体が腕の中に落ちてきた。余韻が尾を引いているのか、まだ身体のあちこちが小刻みにひくついている。

荒い呼吸。熱い体温。どくどくと心臓が脈打っていた。

声を出す気力もないらしく、目を閉じたまま息を整える巧の額に口づけた。

眉がひそめられ、まぶたが開いた。

疲労でとろりとした瞳が覗く。

汗で張りついた髪を掻き上げてやる。

それから気づいた。

「…ゴム、忘れとったな」

巧の目つきに少し鋭さが戻る。呆れたような溜息をついた。

「今さらかよ。…つーか、話題に色気なさすぎだろ」

色気を求められても、と閉口して頬を掻く。

胸の上に乗っかり、豪を見上げるような体勢の巧に勝る色気はないと思うのだが。

「風呂行くか?」
尋ねると、
「…やっぱり色気ねぇ」
口を尖らせ呟く巧。

ごろりとベッドに横になり、そのまま豪を引き寄せる。

繋がったままだった箇所がこすれて、新たな刺激となった。それに反応したのか巧が身をすくめる。顔つきが緩んだ。

「まだ物足りなさそうじゃな」
「そっちこそ」

囁きの後、どちらからともなく唇同士を触れ合わせた。

甘い口づけはすぐに熱に変わる。

ベッドに沈む巧の身体に覆いかぶさった。

舌を絡め指を絡め、身体の奥でも繋がって。

2人の夜はまだまだ長く続きそうだった。

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