青エク/治癒姫

□対等な関係
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限界に気付く前に意識を失ったのか、気付いたら知らない部屋のベッドに寝かされていた彩乃は、彼女の治療はどうなったのかと気になったが体が動かずベッドに沈み込む


「目が覚めましたか」


顔を覗き混んできたメフィストに驚いて目を丸くする彩乃
そんな彼女にメフィストはフフ…と笑みをこぼしながら彩乃の頬を優しく指先で撫でた


「無理をするなと言っているのにぶっ倒れるので兄上もアマイモンもカンカンでしたよ」

『…メフィストさんも怒ってますか?』


頬を撫でる指が止まり、メフィストの笑みが消え失せる
スッと細められたペリドットの瞳に見つめられて息を呑む彩乃はか細い声でごめんなさいと紡ぐ


「あなたの謝罪は意味をなさない
謝っても繰り返すでしょう」


我が身を顧みず誰かの為に
人間としては大変素晴らしい行いですね

頬に触れていた指先を首筋まで滑らせるメフィストはその大きな手で彩乃の首を苦しくない程度に掴む


『め…ふぃ、す…さ…』

「不公平ではないですか
私達の願いを無下にして…
だからこれからは謝罪ではなく、代価を頂こうかと思いましてね」


弧を描くペリドットと釣り上がる口角
格好も相まってピエロそのものだと思った彩乃は、迫り来るメフィストを受け入れるように目を閉じた


「そうやって当たり前に与えて貰えるなんて思わないで下さい」


グッと首を掴む手に力が込められ、思わず目を見開く彩乃はペロリと己の唇を舐めるメフィストを見上げた


「あなたとはまだ契約を交わしてはいない
つまり、私とあなたの関係はまだ対等
むしろ魔力を分け与え、衣食住を与えてやっている私の方が上な事をお忘れなく」


ルシフェルと契約を交わし、アマイモンと盟約を交わしても
彩乃とメフィストの間には明確な約束は交わされていない
アマイモンもそうだったが、明確なものがないことが許せなかった為に口約束でも確かな盟約にした
だがメフィストは逆に明確にしないからこそ、立場は同等もしくは自分の方が上だと主張出来る
そして彩乃に求めることができるのだ


「魔力が無ければ動けもしないでしょう?
兄上もアマイモンもしばらくは来ませんよ」


緩やかに首を絞める手から脈動が感じられる
震える彩乃の涙を舐め取りながらメフィストは嗤う
この憎たらしくも愛らしく愛おしい存在をどうしてやろう
悪魔の本能が鎌首をもたげるのを感じながら、あえてそれを隠さずに彩乃に迫る


『めふぃ、すとさ…』

「お強請りしてご覧なさい
上手に媚びることが出来れば最上級の魔力を与えて差し上げますよ」


触れる手から、指先から彩乃が魔力を奪っているのは分かっている
けれどもその手を離すことはしないメフィストに彩乃は眉をひそめながらも目の前の美しい悪魔を見上げる

突然なぜと問いたい
どういう心境の変化なのかと…
けれども今までが過ぎる程に良くして貰っていただけなのも理解していた
だからこれはその罰が当たったのか
それとももっと別の…


『メフィストさん…魔力を分けて頂けませんか?』

「10点ですね
あ、ちなみに100点中の10点ですよ☆」

『…………』


強請ったり媚びたりなんて経験がない彩乃は困惑した表像で眉を下げる


『…魔力ください』
「6点☆
ただ強請ればいいというわけではありませんよ
可愛らしく媚びることを覚えなさい」

『…魔力ちょうだい』
「20点☆
首を傾げるのはあざとくて良いですがまだまだですね」


点数は上がったが評価が厳しい…
悶々と頭を捻らせるが何度か試しても中々50点以上は行かず、彩乃は音を上げる


『どうしたらいいですか?』

「おや…搾取しようとする悪魔にそれを聞くのですか?
そんなんではいい様に利用されて骨の髄まで食い尽くされてしまいますよ」


勉強しているはずなのに悪魔相手にそれはないと呆れてしまうが、私を信頼していると言った彼女の表情についつい甘やかしてしまいそうになる
だが今回はダメだ
これには意味があるのだから…




2019/05/13

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