青エク/治癒姫

□母なる女
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三日経ち、彩乃はメフィストとアマイモンと共にルシフェル率いるイルミナティの本部がある島根へとやって来ていた


「彩乃、その壺はなんですか?
薬草の匂いがします」


彩乃が抱えていた壺に興味を示すアマイモン
だが彩乃は曖昧に流すだけで答えようとしなかった


「本当にお持ちしなくてよろしいのですか?
女性には重たいでしょう」

『すみません
ですがこれにお二人の魔力をなるべく触れさせるわけにはいかないので』


彩乃はずっと二人の提案を拒否して自分で壺を抱えていた
大切そうにぎゅっと壺を抱える彩乃にメフィストは目を細めたが、ルシフェルがやって来たことで壺から意識が逸れる


「私の小さな主人
ようこそイルミナティへ」


いつもの軍服の正装で現れたルシフェルは相変わらず乙女ゲームのキャラクターかと突っ込みたくなるぐらいキラキラしていた


「…そしてよく来ましたねサマエル、アマイモン
さぁ、中へ
こちらの準備は既に整っています」


かと思えば温度のない眼差しで弟達を一瞥した彼は器用に彩乃へは甘いマスクを被ってエスコートする


「ちなみにどういった手順で神木玉雲から九尾を退くつもりで?」


あなたは自分を犠牲にする事に迷いがないからと事前に把握しておきたいと言うルシフェルにメフィストとアマイモンも同意する


『わ、わたしだって痛い事は嫌いです』

「彩乃、説得力がありません」


アマイモンの鋭い指摘に上手く言い返せない彩乃は小さく溜め息を吐いた


『古典的な憑代封印ですよ
九尾をわたしの式神に取り憑かせてその式神諸共封印するんです』


そう言って人型に切り取った札を見せる
その札を宙に放れば札はたちまち巫女服を身に纏う女となった


『彼女にも術式を組み込み、九尾を捕らえるための罠と封印そのものを担って貰うんです』


彩乃は式神の女に壺を持たせるとそのまま彼女に口付けた
反射的に引き剥がそうとする三人だったが、ある違和感に気付いてその手を止める

彩乃の体内から式神の女へ
魔力が注ぎ込まれているのだ


『…ん、これで事前準備はいいでしょう
後は結界を張れば…』


最後まで話し終わる前にアマイモンに腕を引かれたかと思えば後頭部を押さえられ、キスをされる
口の中全てを舐め回す勢いで蹂躙するアマイモンの魔力の甘さと濃厚さを堪能しながら、彩乃はなんでいきなりこうなってしまったのかと困惑する


「…ん、ぷは
ダメじゃないですか、彩乃
彩乃が兄上達以外にキスするのはなんかイヤです
イライラします」

『…あれが一番手取り早いんですよ
でも魔力をありがとうございます』

「ハイ、またあげますね」


ふと彩乃はアマイモンの言葉に少し引っ掛かりを覚えたが、今は言わない方が良いだろうと判断して口を噤んだ

そのまままた歩き出したルシフェルの背を追い掛けながら、アマイモンは彩乃の式神の持つ壺を指差した


「その壺の中身はどうするんですか?」

『これは魔法円に使います
九尾が逃げ出さないように結界を張るんですが、結界だけに集中する訳にはいかないので
札だけでなくこれを使って結界をより強固なものにするんですよ』


後は見てのお楽しみにと笑う彩乃にアマイモンも頷いてそれ以上質問する事は無かった




2018/03/14
2019/04/29

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