青エク/治癒姫
□札の完成
1ページ/2ページ
二日で新たな試作品を持って来たルシフェルは彩乃の腕を引いて立たせ、優しく微笑む
向き合う彩乃は青褪め、涙を浮かべてルシフェルを見上げていた
「今回は私で試して下さい」
ルシフェルの優しい声に彩乃は涙をこぼす
彩乃はどうしても彼らや下級悪魔で試験することを極端に嫌う
「屍番犬の時の様に彩乃が怪我をしないように
私であれば何があっても彩乃に危害を加えることはありません
それに彩乃の術がハ候王に効くかどうか
試してみるのも悪くはないと思いませんか?」
『でも…』
ルシフェルの言葉を聞いても渋る彩乃にアマイモンが彼女の袖を摘んで引っ張る
「彩乃
ボクも彩乃の術を受けてみたいです」
好奇心いっぱいでキラキラと目を輝かせるアマイモンに彩乃はとうとう折れた
だが…
『…メフィストさんもですか』
「ちょっとした好奇心です☆」
ルシフェルとアマイモンに並んで立ってもらう彩乃だが、メフィストもちゃっかり並んで立っていた
『…まぁ、いいですけどね
じゃあいきますよ?』
諦めた彩乃は腹を括って二種類ある札の内の片方を18枚手に取り、広げて構える
『“封魔格子の術”』
それぞれ六枚ずつ札が三人を取り囲み、光の格子となって拘束する
だがルシフェルが少し手を挙げるだけで
メフィストが指を鳴らしただけで
アマイモンが腕を振るうだけで
その結界は破られた
『…最上級クラスの封印結界なんですけど』
「もう片方の札も試してみましょう」
『もう意味ないでしょ』
ルシフェルに急かされ、彩乃は渋々札を手には取るが、やる気が見出せない
だが適当にするわけではないようで術はしっかりと放つ
『“封魔格子の術”…?』
術を放った彩乃は、先程とは違う手応えを感じて首を傾げた
そして三人を見れば、先程のように一挙動で結界が壊れる事はなかった
「…全然ビクともしません」
「これはこれは…
なかなか強力な結界ですね」
アマイモンが腕を振るっても拳を振るってもビクともしない封魔格子
メフィストも結界に手を当てて眉を顰める
「…彩乃の術はハ候王にも有効なようです…ね」
ルシフェルの目付きが変わったかと思えば次の瞬間、封魔格子が破られた
結界が破れたことによって衝撃波を受けた彩乃は床に座り込んだ
そしてメフィストもいつもの呪文と指パッチンで結界を破る
「これはハ候王に対しても僅かな足止めや隙を突くのに有効なようだ
侮れない姫君だ」
クツクツと笑みをこぼすメフィストに彩乃は結局封魔格子を破られた以上は褒め言葉に聞こえず、ムスッとした表情を浮かべて立ち上がる
「兄上、彩乃
ボクは結界から出られません」
「アマイモンレベルなら完全に封じ込める事が可能なのか
まぁ本気を出せばまた別だろうが、憑依体に支障が出るだろうな」
『アマイモンさんの足止めに有効…ですか』
不機嫌な様子で結界に攻撃するアマイモンに彩乃はこれは使えるかもしれないと目を細めたのだった
2017/06/12
*