青エク/治癒姫

□光の王の警告
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迂闊だった
彩乃はメフィストに許して貰えたことですっかり気を抜いていた

朝目覚めて、朝食を食べ終わったのを見計らってテーブルを真っ二つにしたアマイモンを見て彩乃はそう思ってしまう


「兄上はズルいです」


適当に用事を言いつけ、遠ざけた上に邪魔されないように結界を張って朝まで彩乃を独り占めしていたメフィストはむしろよく我慢した方だろうと思ったが、物を壊すのは頂けない


『アマイモンさん?』


彩乃を抱き締め、メフィストを睨むアマイモン
彩乃は戸惑った様にアマイモンの腕の中でアマイモンとメフィストを交互に見やる


「ボクが彩乃を見つけたのに兄上ばかりズルいです
ボクも彩乃と一緒に寝たかったです
彩乃に魔力をあげたかったです」

「…じゃあ兄上が来る前の補給をお前がしろ
あとこれ以上物を壊すな」

「ハイ、分かりました」


コロリと機嫌が直るアマイモンは彩乃の手を取り、あとで魔力をあげますと言った
彩乃は机を割るほど機嫌が悪かったアマイモンが補給する役割を与えられただけで機嫌が直った事に疑問を抱きながらも機嫌が直って良かったと安心する

一方メフィストは、アマイモンがここまで執着するのは予想外だったと舌打ちする
だが彩乃を使えば今まで以上にアマイモンを動かしやすくなるとも考えるが、溜め息を押し殺す事はできなかった


「怪我はもう良いのですか?」

『はい、ほとんど治りました
あとはお腹の怪我が治れば…』


理事長室に移動した三人
アマイモンは彩乃をソファーに座らせ、尋ねながら撃たれた腹部を刺激しない様に気を付けながら手を当てた


「兄上に差し上げた薬草を塗っているのですね
あとは彩乃が沢山喰べればすぐ治ります」

『アマイモンさんの薬草だったんですね
お陰で大分良くなりました
ありがとうございます』

「いえ、彩乃を怪我させてしまいました
これぐらい当然です
それより彩乃はキチンと喰べて下さい」


彩乃の後頭部に手を添えて引き寄せるアマイモン
彩乃の唇に触れ、魔力を与える
与えられる魔力を取り込みながら、彩乃はメフィストが言っていた事を思い出す

“悪魔の体液には魔力が宿っている”

その言葉通り、メフィストの唾液で傷も癒えた
なら、より魔力を得るには唾液を摂取すれば…

彩乃はおずおずと逃げていた舌をアマイモンの舌に沿わせる
舌先に感じる蜜の味に彩乃は口内に入り込んできたアマイモンの舌をちゅるっと吸う
ジワリと体に広がる魔力の感覚
もっとそれが欲しくて舌を伸ばすが、アマイモンが離れたためそれ以上喰べることはできなかった


「…彩乃が積極的になりました」

『こ、これは…
わたし…』


アマイモンは彩乃をジッと見下ろし、彩乃は顔を真っ赤にしながら自分がした事を思い出して居た堪れなくなった

自ら喰らおうとした
あんなに優しくしてくれたアマイモンさんですら
わたしにとってはただの餌


『…っ』


なんて卑しいんだろう
なんて薄情者なんだろう


「…これが“喜び”、“嬉しい”ということなんですね」


ポツリと零したアマイモンの言葉に彩乃は目を見開いた
アマイモンの言葉にメフィストも笑みを深めた


「やっと彩乃から喰べてくれるようになりました
ボクは嬉しいです」

「フフフ…
そうですよ彩乃
自ら喰べて頂かなければ身になりません
こちらが喜んで魔力を提供しても、貴女はいつも恐れていた
そのせいでその身に吸収される魔力は生きていく上での最低限の量だけで、後は垂れ流し状態になっていたのはそのせいです」


自ら求めなさい
そして喰らいなさい


「私たちは悪魔の王
貴女程度では喰い尽くすことなんて出来やしません
安心して貪って下さい」







2017/05/25

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