青エク/治癒姫

□堕とそうとする悪魔
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目が覚めると、知らない天井で知らない部屋に居ること気付いた彩乃は少し驚く
物音がして音がした方を見てみれば後ろを向いている男の姿があった
祓魔師の服装をして大きなコンパスを腰に差している彼に見覚えがあった彩乃は目を細める


「目が覚めたか」


男が彩乃に気付き、振り返る
眼帯をした彼に彩乃は内心やっぱりそうかと思いつつ起き上がろうとするが、腹部と右肩、右足に痛みが走って意識を失う前のことを思い出した


「まだ動くな
腹の聖銀弾は取り出したがかなりの重症なんだ
まだ祓魔塾生(ペイジ)にもなっていない者が無茶をしたな」


そう言って彩乃に手を貸そうとする彼が手を伸ばす
だが彩乃は思わずその手を振り払ってしまった


『…っ!?
ご、ごめんなさ…』

「…理事長を呼んでくる」


彼はそのまま出て行ったが、彩乃は彼が居た場所を見つめて呆然としていた

怖かった
手を伸ばされて
言いようのない恐怖を覚えた

こわい…こわい…
なにが?

あの存在が…
人間という存在が…

なぜ?
わからない…


『こんなはずじゃ…』


泣きたくなった

分からない
なんで…

あの人を知っているのに…
でも…

でも…


「彩乃?」


声が聞こえて顔を上げれば、天井にぶら下がるアマイモンの姿があった
彼の姿を見てホッと安心する


『アマイモンさん…』

「大丈夫ですか?」

『大丈夫ですよ』


彩乃の言葉に天井から降りてきたアマイモンに彩乃は表情を緩めた


「全然目が覚めなかったので心配しました」

『どのぐらい寝てたんですか?』

「もう夕方になりますから半日以上寝てますよ☆」


アマイモンではない声が答え、振り返ればメフィストとさっきの眼帯の男が部屋に入ってきた
眼帯の男を見て顔を強張らせる彩乃にメフィストは目を細める


「彩乃は彼とは初めてですよね?
彼は優秀な祓魔師で、祓魔塾の講師もして頂いているネイガウス先生です」

「イゴール・ネイガウスだ」

『ぁ…聖彩乃、です…』


よろしくと手を出した眼帯の男、ネイガウスに彩乃は思わず顔を引き攣らせて後退った


「…やはりそうか
理事長、彼女は…」

「えぇ、人間か人間の男、もしくは祓魔師に恐怖を抱くようですね
まぁ仕方ないでしょう
後はこちらで面倒を見るのでネイガウス先生は帰って頂いて結構ですよ
御苦労様でした」


メフィストに任せるのも不安だが、自分は拒絶されているためどうしようもないネイガウスは複雑そうな表情で部屋を出た

彩乃はネイガウスを拒絶しているが、アマイモンは拒絶しない
メフィストはその事に気付いてネイガウスを帰らせた

メフィストはさて…と申し訳なさそうに顔を俯かせる彩乃に向き直る


「悪魔落ちした彼は現在、療養中です
新種の悪魔でしたので専門の機関に送られました
それにしても…随分と無茶をしましたね」

『すいません…
でも下級悪魔たちを放っておけなくて…
それにあの人も…』


最初の内はただの憂さ晴らしだったのだろう
その内に悪魔に憑かれてしまったようだが…
憂さ晴らしに下級悪魔を虐めるのはおかしいし間違っている
けれども悪魔に憑かれてしまったのなら助けなくちゃと彩乃は思ったのだ


「そのせいで酷い重傷ですがね」

『力不足でした
すいません…』

「あなたがあの様な力をお持ちだとは知りませんでした
他に何を隠しているんです?」


彩乃がメフィストに隠していることは少なくない
自分に隠し事をしているのがメフィストには許せなかった

俯く彩乃の顎を掴み、無理矢理顔を上げさせたメフィストはゆらゆらと不安気に揺れる彩乃の瞳を見つめた







2017/05/21

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