青エク/治癒姫

□囲われて
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メフィスト邸を飛び出した彩乃は当てもなく彷徨う事しか出来なかった
森の中で泣き崩れ、枯れることなく流れる涙を惜しみなく大地に注ぐ
そこから誘われたのか山魅や緑男が現れて彩乃を慰める
小鬼や蛇も集まってきて、彩乃は彼らに森の奥にある寂れた校舎らしき旧館へと連れて行かれた

教室に緑を生やして草のベッドを作り出し、リラックス効果のある草花を周りに生やした山魅(デックアルプ)緑男(グリーンマン)
泣き続ける彩乃を慰めようと下級悪魔達は必死に奮闘する

小鬼(ホブゴブリン)(ナーガ)を抱き締めながら、ごめんなさいと謝り続けて涙を流す彩乃
日が昇る頃、ようやく彩乃は泣き疲れて眠った

眠る彩乃を下級悪魔達は守るように囲みながら一緒に眠るのを木の上からアマイモンは見ていた
涙を流す彩乃に目を奪われ、ずっと見ていたのだ
だが彩乃が眠って少しした頃、携帯の着信を知らせるメロディが流れた
携帯を開けばそれはメフィストからで、面倒に思いつつも電話に出る


「…ハイ」

{私だ
お前、今どこに居る?}

「…学園内の森です
ベヒモスと遊んでました」

{…彩乃が居なくなった}


メフィストの言葉にアマイモンは旧校舎で眠る彩乃を見た


{兄上に知られては面倒だ
幸いな事に兄上はイルミナティ内の事で忙しくなるからと暫く来れないようだ
その間に探し出したい
お前の眷属達で探し出せ}

「…分かりました
ですが兄上、なぜ彩乃は居なくなったのですか?」

{そんな事はどうでも良い
居場所さえ分かれば良いのだ
さっさと見つけろ}


そう言ってメフィストに通話を切られたアマイモンは、己の眷属達に守られて眠る彩乃を見る


「…彩乃が泣いているのは兄上のせいだ
なのに兄上は随分と勝手だ」


ルシフェルは普段落ち着いて見えるが、怒れば恐ろしい
だがアマイモンにとっては二番目の兄、メフィストことサマエルもルシフェルと同様に恐ろしいと思っていた
だがそんな恐ろしい相手であっても彩乃を泣かせたことには怒りを感じていた


「兄上にはしばらく黙ってましょう」


アマイモンは旧校舎に己の結界を張った
メフィストからも隠し、彩乃を守るように


「お前達、彩乃を守れ」


アマイモンの言葉に、彩乃の周りで眠っていた眷属達は小さく返事をした
それを見届け、アマイモンはその場を後にした







2017/05/15

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