青エク/治癒姫

□すれ違う心
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メフィストの屋敷から飛び出した彩乃は必死に涙を止めようとするがなかなか止まらない

与えて貰ってばかりの癖に自分は拒否して、その上必死に止めていた二人を無視してルシフェルと契約したのだ
怒らせて当たり前だ

この世界に来て
メフィストさんやアマイモンさん、藤本さんがわたしを受け入れてくれていたから慢心していた
傲慢になって

全然周りの事を考えず、自己中心的な行いをしていた
そのツケが回ったんだ
追い出されてしまっても仕方ない


『…っ』


でももし許されるなら…
わたしはまだ彼らと一緒に…


「彩乃」


声を掛けられ、振り返ればルシフェルが心配そうに見ていた


「大丈夫ですか?
目が赤くなるまで泣いていたのですね」


頬に手を添えながら涙を拭うルシフェルに彩乃はもっと泣いてしまいそうになった


「そんな格好では冷えてしまいます
私と共に帰りましょう」

『帰るって…どこに?』

「サマエルにはもう言いました
あなたをイルミナティへ連れて帰ります」


それは逃げ道を提示された気分だった
ルシフェルさんは迷うこと無くわたしを受け入れてくれるだろう
でもそれじゃいけないんだ…
わたしは…


『…ごめんなさい
イルミナティへは行けません』

「何故ですか?
サマエルは…」

『わたしは二人を怒らせてしまいました
そのまま逃げる様にあなたの元へ行くことは出来ません
わたしは…二人を傷付けた
ちゃんと謝って許してもらいたいんです
あの二人はわたしを救ってくれたから…』


人間は苦痛から逃れたがる
自分を嫌った者を遠ざけたがる
なのに彼女はなぜ…

ルシフェルには分からなかったが、それでも彼女の心は二人に謝罪したいと
許してもらいたいと願っていることを感じ取れたから


「…分かりました
ではせめて…」


ルシフェルは彩乃に淡いクリーム色のコートを何処からともなく出して羽織らせる


「神木玉雲の事は保護しておきます
ただ彼女に憑依している九尾に関してですが…」

『わたしがなんとかします
とりあえず研究材料になるのを止めさせて下さい
後、イルミナティの事なんですが…』


ルシフェルが作った組織、イルミナティ

魔神復活を目的とし、世界各地の不死・再生能力の高い悪魔を求め、エリクサー研究を行う秘密結社
悪魔落ちした者たちも集う反祓魔師の秘密結社


『全容はわたしも分かりません
とても大きな組織…だと思います
大きな組織であれば無くしてしまうのは逆に大変だと思いますが…』


正十字騎士團とは敵対しない様にして欲しい
悪いことや非道な事はもうして欲しくない


「私はもう父上の復活を望んではいません
つまり、イルミナティは既に目的を失いました
彩乃が言う様に大きな組織ですので無くすことは出来ませんが、今後は大きな方針改革を行うことになりますね」

『じゃあもうエリクサーの研究や悪魔の捕獲は…』

「彩乃が望むのなら致しません」


その言葉にホッとした彩乃にルシフェルは泣いていたせいで赤くなっている目元を親指でなぞった


「私はあなたの望みを全て叶えたい」

『なぜ…?』

「あなたを知りたいからです
何を望むのか
何処まで望むのか
叶えた先はどうなるのか
私はあなたの全てを知り尽くしてみたいのです」


今は与え続け
与えられる事に慣れれば…


「神木玉雲の事は既に連絡しました
志摩廉造もイルミナティが変われば問題無いでしょう
ただサマエルとアマイモンの事ですが…」

『自分でなんとかします
わたしが蒔いた種です』


けれども与えられる事に慣れない彼女をまず慣れさせなければ
彼女は一人で行う事に慣れ過ぎている

今回の事でもそうだ
サマエルもアマイモンも頼って欲しかっただけだろうに…


「…分かりました
しばらくはイルミナティの事でゴタゴタするとは思いますが、何かあれば契約印に触れて念じて下さい
どんな時でも駆け付けます」

『ありがとうございます…』







2017/05/14

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