青エク/治癒姫

□大きな亀裂
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メフィストは仕事も片付け、ずっと心待ちにしていた新作のゲームをしていた
だが楽しみにしていたゲームのはずなのに全く集中出来ずにいた

気になるのは彩乃のこと
あの時は言い過ぎた
冷静に考えなくても防衛本能からルシフェルを喰べたと分かるのに、年甲斐もなく八つ当たりしてしまった

彼女を部屋に送ったアマイモンがその後理事長室に来て文句を言っていた
なら彼女は今、一人で居るであろう
メフィストは居ても立っても居られなくなり、ゲームを放り出して立ち上がる

許してくれるだろうか…
少し不安になりながら彼女の自室に繋がる扉に手を掛け開け放った

扉を潜ればメフィストは直ぐに異変に気付いた
非常に覚えのある見知った魔力が彩乃の部屋に色濃く残っている
嫌な予感がしてベッドに近付けば、顔をしかめて吐き気を覚える程の濃厚なマーキング(魔力)が残る彩乃の姿
怒りで我を忘れてしまいそうになった


あっんの、ピカピカ誘蛾灯野郎がっ!!
どういうことだよバカ糞長男がぁぁぁぁああああ!!!!



物凄い剣幕のメフィストに疲れ切っていたはずの彩乃も流石に飛び起きる
紳士の仮面をどこに落としてきたのか、己の兄にスラングを吐きまくるメフィストに彩乃は呆然と見つめた


「こんな夜中に騒々しいですよ兄上」

「何を悠長な事を言っているんだ!
そのツノ引っこ抜いてやろうか!?」


あんただってアンテナある癖に…
ってか何がどうなってんだよ

完全にキャラ崩壊する程ブチ切れしているメフィストにアマイモンも一度目を目開いたが、すぐにルシフェルの魔力に気付いた


「彩乃?
ルシフェル兄上が来たんですか?」

『は?
知りませんよ?
わたし今まで寝てましたし…』


彩乃はとりあえず薄着だったので上着を着ようとベッドを降りようとした瞬間、メフィストは彩乃の肩を掴んだ


『痛っ…』

「それ…」


メフィストは切羽詰まった表情で彩乃の胸元を見ていた
あまりの緊迫した表情に彩乃は戸惑いつつ、服の襟をズラして自分でも見てみると…
見覚えのない紋様が胸元にあった


『なに…これ?』

「…いつ」

『え…?』

「いつ…契約したんですか?」


何を言っているのか分からない様子の彩乃に、真剣な表情のアマイモンがその胸元にある紋様を見ながら教えた


「これは契約の証です
契約を交わすと刻まれるもので、悪魔の言葉で契約者の名前が書かれています」

『契約の証?
なんでそんな…』

「なぜって…何を言ってる?
お前が契約を交わしたのだろう?」


ガラリと雰囲気や言葉遣いが変わるメフィストに彩乃は怯えながら首を横に振って必死に否定する


『わたし、知りません!
契約なんて結んだ覚えもありませんし、第一に今契約する訳はいかないのに…』


今契約してしまえば、もしもの時に藤本獅郎を助けることが出来ないかもしれない

彩乃はその為にアマイモンやメフィストと契約を交わさなかったのだ


『わたし、誰と契約を…』

「ルシフェル兄上です
これはルシフェル兄上の名前です」

『わたし、契約なんて…』

「とりあえず兄上を呼んで話をする」


そう言って出て行ったメフィスト
激怒している様子の彼に彩乃はどうしようと焦燥感を抱きながら、自分に刻まれた刻印を見下ろした


「…着替えて下さい
ボクもあちらに居るので」


一人残されてしまった彩乃は小さく溜め息をつき、とりあえず着替えようとベッドから立ち上がる

これからの事を考えながら…







2017/05/12

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