青エク/治癒姫

□時の王の嫉妬
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川の字で眠るのも
メフィストとアマイモンの間で目が覚めるのも
彩乃にとってはもう慣れたもので、既に起きているであろうに寝たフリをする二人に挨拶をする


『おはようございます』

「おはようございます☆
体調は如何ですか?」

「おはようございます
魔力また喰べますか?」

『体調は大丈夫です
魔力はルシフェルさんがいらっしゃる直…前で良いです
お腹いっぱいになって苦しくなるので』


昨日はあのまま気絶してしまった彩乃は、まずシャワーを浴びたいと言ったので二人は彩乃の部屋から出て理事長室で彼女を待った
シャワーから戻った彩乃と共に朝食を済ませ、魔力の補給してまた理事長室に集まる


『ナイフとグラスを用意して頂いても良いですか?
また血を飲んでもらうことになるので』

「お安い御用ですよ☆
昨日のようになっては困りますしね」


そう言ってメフィストはいつもの呪文を唱えてガラスのコップとナイフを出してくれた
血を出した時の自身の手当の為に救急箱も用意して、彩乃の準備は終わった


「ルシフェル兄上の噛み跡は治りませんでしたね」


アマイモンの言葉は彩乃も不思議に思っていた事だった

ここ数日、メフィストとアマイモンからたっぷり魔力を与えられている彩乃はどんな傷や疲労でも朝には治り、スッキリ無くなっていた
だが先程シャワーを浴びる時に鏡で見て驚いた
くっきりと残ったルシフェルの噛み跡がある事に


「まぁ兄上は虚無界の最高権力者で超上級悪魔ですしね
私達の魔力では兄上の魔障は治せないのでしょう」


分かりやすい実力差というものですねと言い放つメフィストも彩乃の噛み跡は気に食わないのか、少し不機嫌な表情だ

元々彩乃の治癒能力は自身を治癒出来ない
魔力を貰って初めて自分を癒すことが出来るのだ
そんな特性がある以上は傷の治り具合に誤差があっても仕方のないことかもしれない

そうこう話しているとまた理事長室の扉の前に熾天使が現れ、次の瞬間ルシフェルも現れた
今日は仮面を付けておらず、服装も軍服ではなくラフなワイシャツとスラックスだった


「兄上、今日は昨日のようなことが無いようにお願い致しますよ」

「えぇ、分かっています」


ルシフェルは彩乃が座る隣に腰掛け、ワイシャツのボタンを外していく


「よろしくお願いしますね」

『…はい』


見た目的には問題なさそうだが、とりあえず手をかざして癒しの光を当てる

その様子をジッと見つめるルシフェルは、淡い水色の光から昨日見た彩乃の蒼色の瞳のことを思い出した
またあの美しい蒼が見たい…

おもむろに彩乃の前髪を寄せて耳に掛けたルシフェルに彩乃はビクッと体を震わせ、癒しの光も不安定になる


「両方蒼い目かと思ったんですが…
左は紅い目だったんですね」

『あ、の…』

「私とも違う、父上の炎のような目が気になって…
でもコレも綺麗ですね」


そう言って彩乃の左頬に触れたルシフェルだったが、メフィストとアマイモンが揃って「「(ルシフェル)兄上!!」」と声を上げて眉を若干しかめた


「うるさいですよサマエル、アマイモン
何を騒いでいるのですか?」

「兄上!
治療を受けたいのなら大人しくしていて下さい!」

「別に邪魔などしていません
前髪のせいで見えづらいので耳に掛けただけでしょう」


そうは言うルシフェルだが、“彩乃が”見えづらいと気遣っているのではなく、“自分が”彩乃の前髪のせいで目が見えないからだという自分本位な理由だと知るメフィストは気が気でなかった
だが昨日に続き、煩く言われて不機嫌気味な兄にこれ以上言うのも危険だと分かっているメフィストは、隠しもせずに思いっきり顔を顰める


『…えっと、外傷の方はもう大丈夫そうですね
では次ですが…』

「また血を飲みますか?」


期待を込めた表情で尋ねるルシフェルに彩乃も戸惑いながらも頷いた


『え、えぇ
飲んで頂くことになりますが…少量で良いですからね?
そんなに沢山はダメですよ
後、しばらくは点滴などの体内への薬物投与はなるべく控えて下さい
わたしの血液が薄まっては効果が長持ちしませんので』

「分かりました」


素直に聞いてはくれるんだよね…

快く了承するルシフェルに彩乃は安心しつつも不思議な感覚を覚え、その感覚を誤魔化す様にテーブルに置いてあったナイフを取ろうと手を伸ばす







2017/05/11

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