青エク/治癒姫

□利用価値
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「じゃあ彩乃は普通の人間よりトクベツということなんですね」


アマイモンにも全て話せばざっくりと返された
いや、まぁ普通ではないけど特別でもないんですけど…と内心思いつつも面倒になって何も言わない彩乃を良いことにメフィストが頷いた


「そうだ
まだまだ興味深い点も多い
間違っても壊すなよ?」

「ハイ、分かりました」


悪魔兄弟のやり取りを複雑な心境で横目で伺いつつ、彩乃は悪魔学の教科書を読んでいた
元の世界で家柄故にまじないや呪術を学んでいた彩乃だったが、実際の戦闘能力は乏しい
ましてや前の世界でのことなので悪魔に有効とも言えない
対人間用の術式と言っても過言ではないのでこの世界で有用とは言えない彩乃の術式
だがこの微小な力でこの短期間にどこまで備えられるかが獅郎の生死を別ける

彩乃はそれを分かっているので今の内に出来るだけエクソシズムを学んでいるのだ
だがそれでも限りがあり、彩乃はある一つの選択肢を悩んでいた

“悪魔との契約”だ

この世界のことは漫画でしか知らない彩乃にはまだ踏ん切りがつかないでいたのだが、本格的にそちらも選択肢として考えなくてはいけない
けれども悪魔の頂点に立つ魔神相手に悪魔を選択肢にするのは如何様か…


『…時間がない』


悩んでいる暇は無い
彩乃には選択肢が少な過ぎるのだ
そう悩む彩乃をメフィストがジッと見つめていたことに彩乃は気付いていなかった

元々毎日欠かさず勉強していたような勤勉な彼女だったが、この理事長室にまで持ってくるような事は一度も無かった
昨日獅郎と話していた内容をメフィストも聞いていたため、理由は分かっている
けれどもそれを面白くないとも思っている自分が居た
獅郎はメフィストにとって面白い友人で、決して死なせたいわけではなかったが、控え目で大人しいと思っていた彼女をここまで奮い立たせるのが彼という事実が気に入らなかった

メフィストとて彼女を利用しない訳ではないので、人の事を言える立場ではないが不愉快に思っているのもまた事実だった
だがその不愉快さを我慢する程度には彩乃に役立って貰わなければいけないことがメフィストにはあった


「彩乃さん
確かめたいことがあるのですが、お時間よろしいですか?」







2017/05/06

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