青エク/治癒姫

□明かされた秘密
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彩乃と初めて会ってから三日
俺はまたメフィストの元へやって来ていた

メフィストと話していると、ふと下を見ればあの子が居るのに気付いた


「藤本?
聞いていますか?」

「あ?
なんだ?」

「何をそんな熱心に見ているんです?」


そう言ってメフィストは執務椅子から俺の横へ移動してくる
そして俺の見ているものに気付き、目を見開く


「珍しい…
いつもはこの時間はキッチンに居るのに」

「お前…彩乃の事を知ってんのか?」

「私からすればなぜ貴方が彼女の事を知っているかの方が気になりますが…
彼女は二週間ほど前からここに住んでいるんですよ
アマイモンの面倒を見て頂いてるんです」


地の王の面倒を見ていたとは知らなかった俺は驚くが、とりあえず声を掛けようと窓を開けた
だが声を掛ける前に俺は言葉が詰まった
なぜなら、彼女の手が光っていたからだ


「あれは…傷を癒しているのか?」


メフィストの言葉に俺も驚くが、確かによく見れば小鬼の腕にある傷を治しているようだ
淡く光る手を翳していると小鬼の傷がなくなった
元気になった小鬼を見送る彼女に窓を開けて身を乗り出したメフィストが声を掛けた


「彩乃さん、少しお話があるので理事長室に来て下さい」


驚いた見上げる彼女の表情は少し怯えを含んでいるのに気付いた
だがすぐに顔を伏せて歩き出してしまった彼女の表情はもう見えない


「まさか治癒能力まであるとは…」


メフィストの呟きに俺は引っ掛かりを覚えるが、あえて突っ込むことはせず、俺はソファーに腰掛けた


「彩乃のこと
ちゃんと話して貰うぞ」

「…いいでしょう」


思ったよりもすんなりと話すメフィストだったが、その内容は不可解なものだった


「あの“天原の庭”にいて記憶喪失のフリをしているだと?」


にわかに信じ難い話だった
天原の庭といえば、世界中の植物が存在するという不思議な場所
そこには既に絶滅した植物もあり、研究員や悪魔薬学に精通するものなら血眼になって探していた場所だ
結局見つからず仕舞いで伝説扱いになっていたが…


「私としてもまだ様子を見ている状態でね
しかも彼女には特殊な匂いと力があるようで」


上級も上級、超上級悪魔であるメフィストとアマイモンを惑わす匂いを持ち
触れたものを極上の味に変える力を持ち
その血には悪魔にとって滋養強壮の力がある


「…厄介だな」

「その上、治癒能力ときたらヴァチカンが黙っていないでしょうね
貴方の元に居る双子達のように…」


何者かは分からないが、悪い子には思えなかった
悪魔に対してあそこまで優しく出来る子が…


「まぁ本人に聞くのが一番でしょう
ちょうど来たようですし」


メフィストの言葉と共に理事長室の扉がノックされる
メフィストが指を鳴らし、扉が開けられると彩乃が立っていた


「さて、彩乃さん
どう言い訳を致しますか?
それとも…」

『…全て真実を話します』







2017/05/05

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