青エク/治癒姫

□歴代最強の聖騎士
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彩乃の1日はアマイモンに何かを作る事がほとんどだった
勿論、勉強もしているが、1日の大半はお菓子作りが占める
そして夕方になると彩乃はふらりと散歩に出る
夕食から寝るまでは勉強といった1日だ
散歩の時は仲良くなった魍魎や小鬼、緑男と遊ぶこともある


『コールタールちゃんは腐の眷属で、ホブゴブリンちゃんとグリーンマンちゃんは地の眷属なんだね』

「-そう!あすたろとさまにつかえてるの!-」

「-おいらたちはアマイモンさまに支えてるんだぞ!-」
「-あまいもんさまはぐらぐらーってできるすごいおうさまなの!-」


キーキー、グルグル、ニーニーと必死に話す悪魔達に優しく答える彩乃
祓魔塾に入るために勉強をしている彩乃はこうやって下級悪魔達の話を聞くのも貴重な勉強だった


『アマイモンさんは地震が起こせるのね
すごいなぁ』

「-そうなの!すっごい王様!-」


ふと何かに気付いた小鬼が屋敷の方を向いて唸る
彩乃も小鬼の様子に気付いて顔を上げれば、カソックを着た眼鏡の男が立っているのが見えた

あの人は…


「初めましてお嬢ちゃん
こんな所で何をしてんだ?」

『…初めまして神父様
お散歩の途中なんです』


彩乃の言葉に彼の目線は彩乃の足に隠れる小鬼と緑男に移る


「…お嬢ちゃんは悪魔が見えてるのか?
楽しくお喋りしているように見えたが…」

『…神父様、彼らは確かに総称としては悪魔と呼ばれていますが本当の悪魔は彼らのような可愛い子達ではなく、人の心にあると思いませんか?
人の心に巣食う悪魔程恐ろしいものはありません』


ジッと男の目を見つめて言い放つ彩乃に男は面食らった表情をしたかと思えば、大口開けて大爆笑し始めた


「にゃっはっはっはっはっ!
確かにそーだな
いやー、面白い嬢ちゃんだ
俺は藤本獅郎だ
お嬢ちゃんの名前は?」

『…わたしは聖 彩乃です』

「そうか
彩乃、確かにお前が言う通り、人の方がそこらの悪魔よりもよっぽど悪魔だ
だがな、それでも可愛いそいつらが危険なやつになる時だってある
人間が悪魔に関わらないほうが良いと思うぜ」


魔障を受けているなら難しいかもしれないが…と続けた獅郎に彩乃はにっこりと微笑む


『お気遣い感謝します
ですが…わたしは彼らとお友達なんです
だから関わらないなんて出来ません
それに…
祓魔師だって手騎士の者は悪魔と契約して利用しているのになぜ関わりあうなと言えるんですか?』


祓魔師を知っていると思っていなかったのか、驚いた表情を浮かべる獅郎に彩乃は彼が守る魔神の落胤の事を思い出しながら続けた


『それに悪魔にだって色んな悪魔が居るんです
人間に協力する悪魔も
人間と共存を望む悪魔も
人間と絆を持つ悪魔も
少ないかもしれませんが存在します
だからわたしは悪魔だからと嫌煙する気はありません』


彼はその(ちから)を家族や友人、仲間のために使う
藤本獅郎が望んだように彼は成長する
だけど彼もまた悪魔だ
だから悪魔を否定する言葉を彼に言って欲しくない


『わたしは悪魔が嫌いじゃない
人に害を為す存在でもある事も理解はしているから祓魔師を否定はしませんが、全ての悪魔を否定するのは間違っています』


これは譲れない
例えどんな正論を並べられても
わたしはこの考えを変えることはない

そんな彩乃の気迫を感じ取ったのだろう獅郎は、小さく溜め息を吐いた


「…そうだな
確かにお前の言う通りだ
全ての悪魔を否定して良いわけない
はははっ…
そんな当たり前な事を見失っていただなんてあいつらの親失格だな…」


自分が守り育ててきたあの双子を思い出しているのだろう彼は遠い目で呟いた
そして彩乃の頭に手を置いて優しく撫でた


「ありがとうな嬢ちゃん
また会おう」


そう言ってその場を去って行った彼を彩乃は無言で見送った

あと三ヶ月…
彼にはあと三ヶ月しか時間が無い
それを伝えるべきなのか…?

答えが分からぬまま、夕日で赤く染まる正十字学園の街並みを見つめたのだった







2017/05/04

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