青エク/治癒姫

□目覚め
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「兄上」

「…なんだそれは」


執務室にやって来た弟を見れば、その腕の中に人間が眠っているのに目を見開く

どこから連れてきたんだと頭痛を覚えたが、いえ…と言い淀む弟、アマイモンに目を向けた


「アマハラに居たんです
眷属達に聞けば突然現れたんだとか」

「なに?
あそこは悪魔でもそうそう見つけられぬ場所の筈だろう?」

「ハイ、そのはずです…
ですので連れて来ました」


アマイモンの腕の中で眠る少女は長い黒髪が目を引くが、容姿は長い前髪でよく見えない
黒いワンピースから覗く手足は透けるように白く細い
どことなく甘い匂いがするのはアマハラの花の香りか


「目が覚めないことにはどうしようもないな
そこに寝かしておけ」


ソファーに少女を寝かせたアマイモンはソファーの肘掛けに腰掛け、お菓子を食べながら少女を覗き見る


「…お前が人間に関心を寄せるのは珍しい事だな」

「そう、でしょうか…
でも確かにこのニンゲンはとても甘い匂いがして美味しそうですので気になります」


食べる手を止めて少女の髪に触れるアマイモン
ふわりと香る甘い匂いにくらりと頭が揺らぎ、何かが擽られる


「アマハラの花の香りではないのか?」

「違います
このニンゲンの匂いです」


何百年と人間と共に過ごし、 他の悪魔よりも遥かに強固な私の理性を揺るがす程の甘美な香り
悪魔ではないが普通の人間でもない
何者なんだ…







2017/04/26

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