殺生丸夢

□第六話
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あの夜以降、殺生丸様の様子がおかしい

水浴びをした後、殺生丸様自ら私の髪を整えられるようになった
手拭いで水気を拭い、櫛で丁寧にすいていく
時折何かを髪につけられることもある
それが何かは分からないが、髪の毛の色艶や手触りが良くなった

夜、邪見さんが眠ってしまうと私が眠っていても自分の側に移動させるようになった
朝起きたら真っ白もふもふの世界
おそらくこれは匂い付け的な意味合いが大きい気がする…
朝起きたら匂い嗅がれるし…

そんなに羽衣狐の匂いは気に入らないのだろうか…?
不思議に思いつつも私自身どうする事も出来ない
匂いを嗅がれるのは女として結構辛いものがあるが、最早諦めの境地に到達していた


「またか…」


度の最中、不意に足を止める殺生丸に桃花と邪見も足を止めて己の主の様子を伺う
不機嫌そうな表情で振り返った殺生丸はジッと桃花を見て一言…


「匂う…」
「は、はぁ…」


あの夜以降、頻繁に羽衣狐の匂いがするようになった
そのせいで殺生丸は桃花に水浴びを強要するようになった

水辺へと移動した桃花は邪見の見張りの元、水浴びをして匂いを消していた


「もー、なんなんじゃ…」
「すみません、邪見さん…」


邪見も文句を言いたくもなるだろう
最近では日に2、3回は水浴びの見張りをさせられている
桃花としても気温がまだまだ寒いので少しうんざりしていた


「なぜお主から妖怪の匂いなんざしとるんじゃ…」
「それは…」


羽衣狐に成り代わっていたなどという話が通じるとは思っていない
それ以前にどうやって成り代わったかと聞かれでもしたら答える術を持たない桃花は口ごもる


「それよりも早うせんかっ!!」
「は、はい…」


邪見が急かしたが為に話が有耶無耶になった事にホッとしながら桃花は考えていた
もし自分の中に羽衣狐が居て、四魂のかけらによって妖力を得て力をつけたのだとしたら?
私は依代となり、乗っ取られてしまうのだろうか…


「戻りました
…匂いは消えてますか?」


ジッと見つめる殺生丸はまた歩き出した
匂いが消えていたのだろう、匂いが消えてなかった時はものっそい顔を顰められてしまう
ホッと安心した桃花は殺生丸について行きながら懐に入れてある四魂のかけらに触れる
四魂のかけらに触れるとじんわりと暖かくなり、ホッと落ち着くのだ
その暖かさと安心感を感じながら己の中に巣食っているかもしれない羽衣狐を思う

あなたの宿願は叶えた
運命は決まっているんだ
だから清明の完全復活は無理だと諦めて
もう解放して…

ずくりとまた胸の傷が疼いた気がした




2019/08/20

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